〈複製技術〉時代の短歌(「かりん」2021年7月号)
思想家ヴァルター・ベンヤミンが、その名論「複製技術時代の芸術」において、台頭する映画や写真といった複製技術が二十世紀の芸術に及ぼす影響を論じ、芸術の大衆化に対する危機感を著したのは、一九三六年のことであった。〈複製〉による大量生産・大量消費の始まりは、十五世紀のグーテンベルクによる活版印刷術の発明に端を発しているが、そのときの〈複製技術〉は書物の〈複製〉という極めて限定された用途を持っていた。ベンヤミンが映画や写真という進歩した〈複製技術〉を論じてから九十年近くがたち、いま