Shun-ichi Kaizawa

平成二十七年度・二十八年度NHK全国短歌大会近藤芳美賞選者賞(馬場あき子選)/第三十九回かりん賞(2019) 「かりん」で短歌を詠んでいます。歌集、歌書の紹介。その他読書記録。既発表作品もいくつか。 どうぞよろしくお願いします。

Shun-ichi Kaizawa

平成二十七年度・二十八年度NHK全国短歌大会近藤芳美賞選者賞(馬場あき子選)/第三十九回かりん賞(2019) 「かりん」で短歌を詠んでいます。歌集、歌書の紹介。その他読書記録。既発表作品もいくつか。 どうぞよろしくお願いします。

    最近の記事

    フェイク(50首) 第三回笹井宏之賞応募作品

    先日発売された短歌ムック「ねむらない樹-vol.6」に、第三回笹井宏之賞応募作の10首抜粋が掲載されました。選考委員、ならびに関係者の皆さま、ありがとうございました。 これまで新人賞の応募作公開はほとんど行っていませんでしたが、この作品は自分でもいい意味で「あまり作りこまれていない」作品であり、そういう意味で以前の投稿時代の歌のように気軽に読んでもらいたいなと思ったので、noteにて全50首を公開します。お読みになられた方、感想などいただけると今後の励みになります。よろしく

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      • 食をうたうー『異国』Vol.3

        ーーさて、どうしたものか、と思う。 「食」は短歌だけでなく、あらゆる文芸における重要なテーマだ。現代社会における生活と密接に結びついているという部分が大きいだろう。芸能人やレポーター、グルメ記者等は味を詩的に表現することが求められている。多くの作家が「食」をテーマにするエッセイやルポルタージュを書いてきたし、それらはすべからく「文化」や「民族」といった難しい問題を問いかけてくるものであった。 ところがどうだろう、僕は「食」を表現するということにあまり興味がない(というか、

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        • 言語をうたうー『異国』vol.2

           ポルトガル語が話されている国々には太陽が良く似合います。リスボン、リオデジャネイロ、サルヴァドールの街並みと海岸の夕陽はあまりにも美しい。(…中略)南米大陸のブラジル、アフリカ大陸のアンゴラやモザンビーク、大西洋、インド洋や太平洋の島々でポルトガル語が話されたり公用語になっているのは、ポルトガルの海外発展の結果です。  …ポルトガル語が定着したといいましても、世界のポルトガル語圏の人々が同じ発音で同じ語順のポルトガル語を正確に話しているのではありません。(中略)人間の声帯

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          • 異国をうたう、それぞれ

            7月~8月にかけて、二つの短歌企画に参加した。結社の先輩である上條素山さんが中心となった、映画『タゴール・ソングス』応援企画短歌ネプリと、『あおなじみ』でもお世話になっている鈴木智子さんがTwitter上で呼びかけていた短歌同人『異国』である。小さいころから外国に人一倍あこがれが強かった僕にとって、どちらもとても興味深い企画だった。 ーーーーーーーーー 以下の作品は『タゴール・ソングス』応援企画からの引用。 故郷の言葉はひとつの声となり「ひとりで進め」とくりかへす夜/寺

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            • 「かりん」2020年5月特集号を読む【番外編】若手座談会風レポート(後半戦)

              ※前半戦は6/11投稿の記事をご覧ください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【碧野みちる:10首目】   薬効が切れ卒倒するわたくしの此処がロボットプラネットユートピア 郡司:初読のときは深く鑑賞できそうだったけれど、調べたら「ロボットプラネットユートピア」の元ネタは音楽ゲーム(CHUNITHM)の楽曲名だと知って、どう解釈すればいいか分からなくなった。音ゲーしすぎて倒れちゃったのかな? 碧野:自作解説はよくないかもだけど、これは、私がゲーセンのアーケード

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              • 「かりん」2020年5月特集号を読む【番外編】若手座談会風レポート(前半戦)

                2020年5月11日、オンライン会議ツールを用いて、「かりん」所属の若手六名(郡司和斗、川島結佳子、貝澤駿一、碧野みちる、丸地卓也、小田切拓)による歌会が行われました。全員が出詠している「かりん」2020年5月号の特集を用いた歌会の中で、この議論をテキストに残して公開したら面白いのではということになり、実行することにしました。(公開場所が僕のnoteというのは他にもっとなかったのかと思わなくはないですが…。) 前後編に分けて更新します。今回は前半、郡司和斗、川島結佳子、貝澤

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                • 「かりん」2020年5月特集号を読む⑦黄郁婷、中武萌

                  最終回です。なんとかやりきりました。 * * * なぜあんなに塩をまくのかそういえば台湾でも幽霊に塩まく 小さな力士が大きな力士を投げ飛ばす怒涛のような歓声上がる 黄郁婷「大相撲初場所」 黄郁婷さんは、台湾出身の歌人です。祖国である台湾と異国である日本のはざまにおいて、ゆらぐ自らのアイデンティティの問題や、広く「民族」というテーマを描く傾向があり、そうしたスタイルは同じように外国出身の歌人で注目されるカン・ハンナさんとも共通した部分があります。カンさんと比較すると、

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                  • 「かりん」2020年5月特集号を読む⑥のつちえこ、大橋謙次

                    一週間以上書き続けているこの記事も、おわりが見えてきました。完走目指して残り四人です。今日は福岡ののつさん、大阪の大橋さんと、東京ではなかなかお会いできないお二人の作品を読んでいきます。 * * * 勝った奴が強いと言い張る人と食うバターメロンパンあんホイップサンド イントロのじゃんじゃかじゃかじゃん繰り返す心で今年引っ越しをする のつちえこ「まくしたてたる」 普段の「かりん」を読んでいると、のつちえこさんはシンプルなつくりの歌も多い反面、時折「ヘンだな」と思う歌も

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                    • 「かりん」2020年5月特集号を読む⑤小田切拓、岡方大輔

                      * * * 高級なホテルのコーヒー一杯に満たない時給で働く図書館 この地図を拡大したら僕がいる 拡大せずに見つけてほしい 小田切拓「規格外」 小田切拓さんは僕と同い年であり、ほぼ同じ社会的背景を経験してきたことから、歌の中での考え方や思考の枠組みが似ている部分があると感じています。僕たちの世代は、「失われた十年」に生まれ、幼少時代は「キレる〇〇歳」の報道を見て育ち、その揺り戻しで行われた「ゆとり教育」を経過し、成人後は「三年で辞める若者」と揶揄されながら、なんとか社会

                      • 「かりん」2020年特集号を読む④上條素山、谷川保子

                        昨日は夜遅くまで、かりんの郡司和斗さん、のつちえこさん、大井学さんと5月号特集を読むツイキャスをやりました。しどろもどろになりながらも、なんとか話について行って、途中「読みがシビア」などと言われたりしながら(厳しかったかな、僕)、やっぱり短歌の話をするのは楽しいなあと実感しました。将棋でいえばとことんまで感想戦をするような、そんな文化がかりんの中には根付いているのかもしれません。 昨日話したことと重なる部分はありますが、今日は上條素山さんと、谷川保子さんの作品を簡単に読んで

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                        • 「かりん」2020年5月特集号を読む③川島結佳子、碧野みちる、丸地卓也

                          前回までの続きです。今日は三人紹介します。 * * * 水の惑星に住んでいるのにひたひたも被るくらいも分からずにいる 夜のアスファルトみたいに光ることあるのだろうかスペースデブリ 川島結佳子「マッシュアップ」 川島結佳子さんは、一貫して体温の低い作者です。自らの言葉が詩であることを全力で拒否しにいくような、そんな一面もあります。しかし、時には意外なものに対してやさしさを見せたり、ストレートな相聞を詠んでみたり、スタイルは一貫していますが幅は広い歌人です。おそらく、川

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                          • 「かりん」2020年5月特集を読む②川口慈子、辻聡之

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                            • 「かりん」2020年5月特集を読む①郡司和斗、鈴木加成太

                              「かりん」2020年5月号では、「次代の駆動力」と銘打って、かりん所属の若手歌人による本格的な特集が組まれています。各人の新作十三首と、歌人論を合わせて読むと、さながら良質なアンソロジーのよう。ここでは、寄せられた新作十三首からいくつか拾い読みしつつ、「かりん」を直接手に取れない方にも若手の魅力が伝わるように、思ったことを書いていきたいと思います。 * * * ためぐちと敬語のまざるやりとりを深夜の路地にとおく伸ばして 趣味はボクシングといえば少年は「ぶってもいい?」と

                              • 一分で読む現代短歌⑥ 川島結佳子

                                都市、田園、都市、田園ときてたまにケーズデンキが見える東海道/川島結佳子『感傷ストーブ』(短歌研究社 2019) 長旅のさなか、車窓に流れる景色をふと眺めている。都市と田園、また都市と田園。同じような風景がただひたすら続くその中を、ささやかな彩りを添えるかのようにケーズデンキが屹立する。そんなふうに世界をざっくりと三つに分けて知覚する主体はいま、そのどれからも隔絶された狭い空間にいて、その不穏さを噛み締めているように思える。 ここで並列される<都市><田園><ケーズデンキ

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                                • 一分で読む現代短歌⑤ 木村比呂

                                  一人きりサーティーワンの横で泣き ふるさとにする吉祥寺駅(木村比呂)※枡野浩一『ショートソング』(集英社文庫、2006)所収、初出は枡野浩一編『かなしーおもちゃ』(インフォバーン、2005) サブカルチャーや学生、お笑い文化の発信地というイメージが強い吉祥寺。僕は数えるほどしか行ったことのない町であるが、吉祥寺を舞台にした文学作品は好きで、くりかえし読んだ作品も多い。「吉祥寺文学」というジャンルは、又吉直樹『火花』が芥川賞受賞・映画化を経て人口に膾炙したことで、改めて注目さ

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                                  • 一分で読む現代短歌④ 郡司和斗+それと口語の韻律の話

                                    まあ親子で死んで良かったねと煎餅齧りながらニュースに母は(郡司和斗「ニュースに母は」/『かりん』2019年9月号) 第39回かりん賞受賞作冒頭の作品である。現役の大学生である作者は、母とニュースを見ながら他愛もない話に興じている。(僕は作者をよく知っているので、想像するに)帰省して母とくだらない世間話をして、穏やかに過ごせる毎日を喜んでいるのだろう。それはある意味では理想の親子関係であるようにも見える。思春期を乗り越え、精神的に大人になりつつある作者が、普段は離れて暮らす母

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