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書評

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2022年1月の記事一覧

書評 #51|心が震えるか、否か。

 『心が震えるか、否か。』は真摯な作品だ。香川真司が心の声に向き合い、ミムラユウスケがそれらの声を一つに紡ぐ。濃密な言葉の数々は細部へと眼を向ける、香川の丁寧な性格を表現しているような気がした。  本書は出会いの物語でもある。努力を継続する力。天真爛漫な一面も持ち合わせる人間性は人々を魅了し、ライバルたちを凌駕していく原動力となる。小菊昭雄、レヴイー・クルピ、ユルゲン・クロップ、アレックス・ファーガソン、トーマス・トゥヘル。師たちと出会い、その出会いを力へと変えながら、香川

書評 #50|三日間の幸福

 身体の奥深くから浮かび上がるような涙を流した。人生は悪くない。『三日間の幸福』はそう思わせてくれる。  際限のない世界の中で、自身の無力さを嘆いたことがある。価値を疑ったこともある。そういった考えを取り払い、純粋に自分のために生きること。大切な他人のために生きること。簡単ではないが、その追求が幸福をもたらすことを本書は語る。  鳥肌にも温度があることを実感させてくれる。絶望は冷たく、希望は温かい。その上昇曲線に救われ、癒された。「消える存在が描く、消えた存在」の儚くも、