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2021年12月の記事一覧

書評 #49|六人の嘘つきな大学生

 『六人の嘘つきな大学生』は読者参加型のゲームのようだ。ハイテンポで進む物語は読者の想像を超えていく。振り返れば、浅倉秋成の掌の上で転がされていたことを自覚する。  「表と裏」は鍵を握る言葉だが、本著の真理はより深くに位置する。善悪。明暗。人間は時に自らをも含めて物事を分類し、その行動に囚われ、執着する。しかし、その行いは突き詰めれば、不可能なことではないか。人間はそこまで単純ではないからだ。表現すれば「灰色」。その色を分類の象徴でもある就職活動をテーマに描き出す。 「透