書評 #15|ユートロニカのこちら側
スマートフォンから離れると、不便さと同時に解放された感覚を覚える。世界中の人々をつなぐ糸。止めどなく押し寄せる情報の波。人はスマートフォンを操作するのではなく、スマートフォンと同化した。データ化された人格。データ化は均一化を生み、個性の喪失へとつながる。
小川哲の『ユートロニカのこちら側』を読みながら、ジョージ・オーウェルの『1984年』、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』、『ガタカ』や『マイノリティ・リポート』といった作品が頭に浮かぶ。細部の記憶はあやふやだ。