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書評

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2020年7月の記事一覧

書評 #2|孤狼の血

 警察小説に以前から魅了されている。横山秀夫の『64』『第三の時効』、今野敏の『隠蔽捜査』シリーズなどがそれに当たる。犯罪を追う非日常性やそこに内包される謎解きの要素はもちろんのこと、ベールに隠された警察組織の内部を垣間見られること、極端に上意下達のマッチョな環境の下に描かれた人間模様も興味深い。今まで言葉にしたことはなかったが振り返ると、そのような考えに行き着く。柚月裕子の『孤狼の血』も同様だ。この後の文中では作品の核心や結末が示唆されているため、気になる読者は読むのを避け

書評 #1|ロスジェネの逆襲

 久しぶりにドラマ『半沢直樹』を眼にし、働く人々の共感を誘うストーリー展開に心を刺激された。「感情表現の強調」を歌舞伎の醍醐味の一つと捉えるならば、市川猿之助や尾上松也が登場する企業を舞台にした経済ドラマも歌舞伎にも似た、良質なエンターテインメントへと昇華される。第一話の余韻が残り、僕は六年前に読んだ原作『ロスジェネの逆襲』を再び手にした。この後の文中では『半沢直樹』『ロスジェネの逆襲』両作品の核心や結末が示唆されているため、気になる読者は読むのを避けてもらいたい。  この