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「詩 その他」から分離して、詩のテクスト情報を掲載します。
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2022年5月の記事一覧

#液 8

#液 8

液体の夜に
奇妙なビートが生まれた
不愉快な鼓動のようなリズムに
軽薄な装飾音が散りばめられている
ベースの音はルーズだ

雨が降ったら聞いていくれ
恋人と抱き合う時の汗に上手く混ざると良いと思うよ

綴ること

綴ること

あなたを分解しないでください
殆ど書くことに呪われた私達は
毎日何かを燃やしているかのよう
駆り立てられ消費する亡者です
息も絶え絶えに新しいものを消化し
蹂躙し、忘却して行きます。
まもなく私達は知り尽くすのでしょうか?この地上の全てを?
いいえ、益々無知になるでしょう

刈り取って、吐き捨てて
ズタズタにされて行く今この瞬間の中で
あなたが正気を失って駆り立てられた愛だけが
月のように冷たく浮

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湧き上がる

湧き上がる

給湯器が唸る音
風呂場は朝の光に満ち溢れ
五月の朝は月曜日らしい快活さだ

やかんが電子コンロにかけられ
熱を上げられている
間もなくコーヒーが淹れられる

文面とコラージュの違いというものが時々わからなくなる
学術的文章は思考の自殺を図りたいのか
或いはこの世を概念で紐解きたいのか

いずれにせよ湧き上がる一日の活気は片結びの様にねじれてメビウスの輪の様な姿で風景の中に浮いている

丸で呪いの様

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2 指

お前が安心して悲観出来るように
冷たい指を温めよう
自己は益々重くなる、積み上げる花束の数だけ
旋律は絶望して風景は崩壊した
緊張と弛緩が支えている
限りない描写の中で
お前が安心して書けるように
月のようなノートを机に置こう

#1 幻

わたくし達は理解し合うことが出来ない
夢の中で出会うあれこれや
もう別れた友人に出会うことが無いように
わたくしとあなたは分かり合うことは出来ない

或いは闇の中を這い回る散策の中で
思い浮かぶモチーフの幾つかが重なったとして
数え上げる人物の影がわたくしに触れたとして
それはわたくしではないのです

わたくしはあなたの手中にはおさまらない
まるで一滴の液体のように溶けて行き
水面へと帰ってしまう

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