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yuka~好きだという決心~

yukaと初めて2人で帰って、その夜に互いが冗談をいいつつ電話を終え、
ここ2・3日の、2人に起っていたトラブルは、解消できたなと思った。

翌日学校に行き、放課後になるまでクラスの中で別々の生活を過ごし、
文化祭準備の放課後。オレはいつものように、いや、昨日の暗く沈んだ
気分を変えようと、気分を上げてyukaのいる製図室へ行った。

行ったんだけど・・・いない。
いつもいる窓際の奥の製図机にyukaはいなかった。
もしかすると、教室にいるんじゃないか?と思って教室へ向かう。
すると、そこにyukaはいた。

いたんだけど・・・絵を描いていない。

誰もいない教室で、yukaの席とは違う、窓際の席に座っている。
入ってきた瞬間のオレに気付いていても、人見知りのような顔で、
目線が定まらず、チラッとだけオレを見た。

オレは、
「おー」と言い、yukaの方へ近づく。
yukaも、
「おー」とは言うが、まだオレの方をチラチラと見ている。

明らかに態度がおかしい。

教室へ入る早々、困ってしまったな・・・。
オレは感じてはいたけれど、色んなアンテナを体に立てながら、
yukaの様子がおかしい原因を探ろうとしていた。

いつものような会話が弾まない。昨日の夜はあれだけ軽口を叩いていた
yukaが、今日は他人行儀で全く話に乗ってこない。
といっても、怒っていたり、落ち込んでいる様子は無さそうだ。

この2人で帰った夜以来。
yukaがオレの前で見せる態度は、ほぼほぼこんな感じになった。
電話では元気よく、そして悪口の言い合いも出来る仲なんだけれど、
2人が会うとなれば、yukaはギクシャクした態度を見せる。
これは数年後まで続くことになります。

この当時のオレ。
そんな事で、何を考えているかを察する力もない。
ましてや、何がどうなんだという答えが欲しいだけだから、yukaに
対して、どんどんと心の中に入ってしまう。

「今日おかしいやん。昨日の夜の事は解決したんやろ?」
「うん」
「だったら、なんで今日は無口なん?絵も描いてないやん?」
「・・・・・・」
「まだ何か言いたいことあるんやったら言うてくれよー」
「・・・・・・」
「yuka。喋らんかったら分からんやんか」
という調子。

黙ってその時間を一緒に待つ事も出来ず、ただ自分の答えが欲しいだけ。
本当に今思い出すと、yukaの心情を無視していたもんだなぁと思います。

すると、yukaが突然。両手で口を隠して目を逸らせて窓の方へ向いた。

「どしたん?」とオレが聞くと、両手で押さえていた手の片方で、
オレの顔の前に突き出し、そして、
「ちょっと待って!」と言った。

そしてそのまんまyukaの言うことを聞き入れ、黙って待っていると、
両手を押さえていた口を離して、
「はぁーーー」と大きなため息を付いた。

もう一度、オレは静かな声で、
「どうしたん?」と聞く。
yukaは少しだけ時間を置いた後に、

「今日あんたに会ったら、緊張してんねん」と。
それを言った瞬間にまた口を両手で押さえる。

オレは、
「なんで緊張するん?いつも通りにしてくれれば・・・」と言いかけた時に
yukaが、
「ちょっと待って、震えてるの見られたない!」と口早に話した。

秋口のオレンジ色の光映える校舎の窓際。

栗色の髪もオレンジ色の光に包まれていたyuka。

目線を時々だけれど、オレに向けてはみるものの、すぐに目をそらす。
そしてyukaが、
「ごめんなぁ・・・」と言った。

「なんであやまんねん。」とオレが言うと、
yukaは「それもそうやけどな」と少しだけ口を押さえた状態で笑った。

yukaが笑うと、目元がキレイな円弧を描いて細くなる。

その瞬間だと思います。オレはyukaが好きなんだと実感したのは。

「このまま口隠してるんやったら、喋れるー」とyuka。
「じゃあ、そのままでええから。けどなんで緊張するかなぁ」とオレ。
「ほんまやで。アンタやで?今日から緊張しだしたわー」とyuka。
「失礼なトコは変わってないけどな!」とオレ。
またyukaの目が三ヶ月サンになった・・・。

ゆうさん


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