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文化祭が終わって。

2日間の文化祭が終わり、自分の感情も、そしてyukaの感情もぐちゃぐちゃ
になってしまった。
あの時。yukaが製図室の倉庫に来てくれなかったら、オレはそのまま相手を
ぶちのめしていたか、後輩の集団にめちゃめちゃにやられていたか。
どちらにせよ、大きな事件になり、学校にはいられない状態だったと思う。

大泣きに泣いた倉庫で、心が落ち着くのを待って友人が鍵を開けてくれた時
数人の仲間の中に、目を腫らしたyukaが静かに立っていました。
オレもみんなに何も言わないままで、yuka以外の友人から、
「気にすんな」「もう大丈夫だから」「無茶なことするなよ」と声を
掛けられつつ、黙って教室に戻り、荷物を持って家に帰ったのです。

幼少期から貧乏で家庭不和、兄の非行や母親の不倫。
高校になって学費も払えず、バイトや悪いことをして学費や生活費を
払い、家にも帰らず友人の家に転がり込んでいた日々。

心の中で堅く封じ込めていた心が爆発。
あんなに泣いた日は無かった。
吐いた感情の代償は、とても疲れた事。家に帰って泥のように眠り、
翌日の振替休日も、ずっと布団に籠もったままでした。

明日の学校には行きたくない。もうどうでもいい。このまま学校に
行かなくても・・・。
疲れた心は、学校生活の全て。いや、もう人生の全てを放棄した状態に
なっていたと思います。

その日の夜。布団に籠もっていたオレに、母親が部屋を開けて、
「◯◯さんから電話」と。yukaからの電話でした。

電話に出るなりyukaは。
「明日学校に来るんよ。」と、静かな声で言う。
「わからん・・・。」とオレ。
「もう何も大きな事にならんかったやん。気にしてどうするん?」とyuka。
「気にするとか、もうそんな事も思ってへんから。ただ、しんどいだけ」
正直言えば、この疲弊しきった心の有り様を、誰にも説明できるのは難しく
特にyukaに、なんといえばいいんだろうと。
いや、何も言いたくない。とにかく疲れているんだというしか無かった。

この会話があった後にyukaが、
「ゆうきは私が守るけん。背負った荷物は私が背負うけん。」と。
この時は「yukaがオレの何を背負うのか。」と、気にも止めなかった
この言葉が、今後の自分の人生で、大きな言葉になって残るのです。

オレはyukaに気を掛ける事もなく、
「じゃあ、オレのしんどい気持ちを背負ってくれよな」と。
yukaは、明るい声で、
「そんなん、アンタの重い空気も吸い込んでやるわ!」と言いました。

そしてyukaは、そのままの調子で、
「あの、文化祭前の話も全部解決したから!もうアレも無し!!」と。
オレは、
「無しって言うても・・・。オレの気持ちには残ったままで・・・」と言った
その先からyukaは話を遮るくらいの速さで、
「だから!私が全部背負うって言うたやん!大丈夫やから!!」と。

「とにかく!明日は学校に来ること!」
そして吐き捨てるような速さで、
「もうこんなこと言いたくないけど!待ってるから!じゃあね!」と、
突然電話を切られました。

今になって思うのですが、yukaは明るい感情は出すけれども、ネガティブな
感情を発する事は無い=とても苦手な女性でした。

相手に言われた事は、そのまま受け取る。
決めたことには一歩も引かない。
相手なりに心を委ねない。行動しない。

そんなyukaが、こうやって自分を守ってくれてたんだなと思うと、
今になってなのですが、とても感謝しなければならない電話だったと
思います。

オレは、yukaがあれだけ言っているんだから・・・。と気持ちを切り替え、
翌日、なんとか学校に行く事が出来ました。

その日、オレの席に座ると机の中。その前の方に小さな「紙片」が。
見ると小さく折りたたんだ紙の表面に「yuka」と書かれていました。

広げてみると「文化祭前と同じように、授業が終われば教室で。」と。

その日の放課後。
オレはyukaの手紙のままに、教室に残っていました。
yukaはまだ、女のコの同級生と話している。
そして、yukaとともに2~3人が教室の外へ向かおうとしていた
時に、yukaだけがオレの机の方に向かってきて、
そっと机の上に手を置いて、そのまま相手を追いかけて行った。

机の上には、また朝と同じような「紙片の手紙」が置いてあって、
「ごめん!もう少し待って!場所変更!製図室!」と共に、
クマが大粒の汗をかきながら謝っているイラストが書いてありました。

文化祭が終わった製図室は、誰も居なくて。
オレはそこに場所を替えてyukaが来るのを待ってました。

数分して「ごっめーーーん!!」という大きな声とともにyukaが
入ってきた。
yukaの表情は本当に「わかりやすく」て、今日はオレの目を見て
話していないなぁと、オレは思いました。

そのままの伏し目がちな表情でyukaは、
「今日は学校大丈夫やった?」と。
オレは、
「オマエが来いって言わなかったら、絶対に来てないわ。」と。

そうするとyukaは喜んでオレの目を見ながら、
「な?私の力って凄いやろぉ?」と、オレをからかう様な言い方を
して、微笑みました。

しかし、自分はまだ文化祭前のyukaの気持ち。そして文化祭でのあの事件
からは立ち直っていない状況。

その中でyukaがこうしてオレの事を気遣いつつ、励ましてくれている事に、
とても気が重い・・・。

この「2つ」の事に互いは触れる事無く・・・。
ここでの記憶が余り無いのですが、差し障りの無い会話をしていたと
思います。

その時に、突然yukaがこう言ったのです。

「あのな。私絶対に言われたくない言葉があんねん。」
「それ、ゆうきに言っておくから絶対に今後言わないこと!」

なんの話を突然切り出してくるのか・・・。
オレは不審に思いつつもyukaの性格からして、回りくどい言い方は
しないだろうと思い「うん」と返事。

「言うよ。」
「うん。」

「オレの前から消え!散れ!去れ!これね。」とyukaは言ったのです。

「???」なんのことやら意味が分からず。
「なにそれ・・・どういうこと?どういう意味なん?」と聞き返しました。

yukaは、
「他のことなら、何を言ってもいいから!けどこの言葉は絶対にダメ!!」
と念を押すように再度同じ言葉を繰り返した。

「オレの前から消え!散れ!去れ!絶対に言っちゃダメ!」

理由は・・・yukaの性格から言う訳も無く・・・。
オレは「そんなこと言うかよ(笑)」と可笑しくなった。

けど、この約束が2人の関係に大きなきっかけとなるのです。

ゆうさん


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