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yuka~初めて2人で帰る夜~Part2

yukaが突然、オレを家に招待する・・・。
いやいや、yukaが急にオレを連れてyukaの家まで帰ると言い出した。

yukaは意を決したように、自転車を押して繁華街に向かう。
どんどんどんどんyukaは先に進む。

オレは後から付いていく。
オレは物凄く戸惑いながらも、真剣にyukaの背中を見ながら、
「何がどうなった?」を自問自答しながら後を追う。

そしてオレは少し駆け足になってyukaに、
「おい!おいって!!」とyukaを呼んだ。

どんどんと歩幅を進めていたyukaが、力んだ背中をそっと落として。
スッと押していた自転車を止めた。

「いきなり家に行くのは無理やろ。連絡もしないままで、家族に会うのって
オレにはハードル高くないか?」と言った。

yukaは案外にも「うん。そう。」と言った。

あれだけいつも明るい笑顔で、人の目をきちんと見て話すyukaが、
今はオレの顔を見ようとせずに、アーケード街の地面をずっと見ている。

その当時のアーケード街。
オレ達がいるこの場所は、当時西日本最大のアーケード街で、今とは違って
多くの人達が、街の喧騒とともに歩いていた。

そこに学ランと制服着た2人がポツンと。
そこだけ景色が止まったかのように立ち止まっている。

考えてみれば、yukaと放課後一緒に帰るのは、これが最初だ。
それも突然家に連れて行くと言って、なにも喋らず、どんどんと前へ進む
yukaと追っかけるオレ。こんなシチュエーションが最初の帰り道でした。

オレは、
「今日は〇〇駅まで一緒に帰れるから、そのまま帰ろ?」と言った。
yukaは「うん」と言ったきりで、静かに自転車を押し始めた。

自分は反対側の駅が通学駅になる。
しかし2駅分歩けば、yukaと一緒に帰れる事ができました。

繁華街を抜けて、湾岸道路に面した道を2人で歩く。
yukaは落ち込んだ・・・。いや、黙ったままで、静かに自転車を押している。

オレも声は掛けられない。静かにyukaと歩幅を合わせる。

帰り道を急ぐ車の速さに風が生まれて、
yukaの短い髪を何回か揺らしていました。

駅に近くなって、ここで道が分かれる。

オレは「今日はここまででいいから。とにかく気をつけて帰れよ。」と。
yukaも「うん」と言って、そのまま立ち止まっていたけれど、
自転車にゆっくりと乗った。

「ほなの」とオレ。
「ほなな」とyuka。

このまま2人は離れて、互いの道を行きました。

オレは電車に乗って。
突然の「yukaが家に連れて行こう」とした事を、昨日の電話から
ゆっくりと考えながら、車窓の流れる景色を見ていた。

yukaにすれば、オレを家に連れて行く間。
それとも家に連れて行けば、yukaの中で思い詰めていた何かが、
言葉として表せたんじゃないだろうか。と、考えた。

もし、あのままyukaの言う通りに家まで行く決心をしたならば、
何かyukaから新しい言葉が聞けたんじゃないかと思い、
別れた場所から遠い町並みの景色に移った時間とともに、
段々と後悔がたちました。

いつもであれば、放課後にyukaと話す時間があって。
それから家に帰って、電話で話すのが日課。

けれど、今日はyukaに電話を掛けていいのかどうかも分からず・・・。

その躊躇していた時間が過ぎ、自分はyukaの家に連絡をしました。

いつもより長い着信音の後に。
「もしもし〇〇です」とyukaの声。

「あー。オレ。」
「うん。おかえり。」

「今日はyukaに付いて行ったほうが良かったな。」
「・・・・・・・・・」

「そのまま帰してしまって後悔してんねん」
「・・・・・・・・・」

無言のままで聞いているのかどうかも分からないyuka。
すると、

「じゃあ、なぜ戻ってこなかったん?」とyukaが言った。
「え?」とオレ。

「ワタシ。あのまま駅に行ったら、ゆうきがいると思ってた。」
「え???yukaそのまま帰らなかったの?」とオレ。

「戻ってきてくれると思ってた。けど待たせるんイヤやから、
ワタシも駅に行ったんやん」と。

びっくりして「え?え?」と戸惑っているとyukaが、
「ま。これは貸しにしとくけんな!!大きいよ!?この貸しは!!」
と言って笑った。

オレは一瞬のyukaの笑い(だけ)に安心してしまって、
「なーんや!そんな貸しくらい。倍にして返してやるわ!」と言った。
yukaは、
「ふん。そんなん倍にしても、私の心のほうが大きいわ」と。

そのまま、いつものように話が出来た。
そう、オレはいつものように話が出来た事だけを安心してしまった。

数年のyukaとのやりとりを思い出せば、
こういった「分岐点のようなもの」がいくつかあって、そのチョイスに
ことごとく失敗しているのが自分でした。

「あの時。こうしておけば。」
「あの言葉を、こう受け取っていれば。」

けれど、この後悔の一つ一つが、自分を成長させてくれたんだなと思います


ゆうさん



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