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yuka~大荒れの文化祭~

yukaに告白した瞬間。yukaはそのまま製図室を飛び出してしまった。
オレはyukaを追いかける事も出来ず、yukaから聞いた秘密の話に苦悶し、
その状態で動くことすら出来ませんでした。

yukaは製図室に荷物を置いたまま。
このまま待っていたとしても、yukaは帰ってくるか・・・。
いや、このままの状態でオレは待つ事が出来ない。
「帰るか。」と小さく呟いて、yukaが開けた扉を締めて製図室から
出ていきました。

その日の夜。
yukaが飛び出したまま家に帰ったのか、それとも製図室に戻ったのか、
それが気になって、yukaに連絡を入れました。

「はい・・・」
明らかに。
明らかにいつものyukaとは違う、落ち込んだ小さな声。

オレは勇気を出して、
「あのまま家に帰ったんか?」と聞きました。

「うん」とyukaは小さく返事。
オレは今思うと「おかしな決断⇒行動」をしてしまう事になります。

「今日の話やけど」とオレが切り出すと、yukaは少し大きな声で、
「その話はちょっと待って!」と。
「いや、オレも・・・」と話を遮ろうとすると、
「今日、ゆうき以外にも告白された」と言うのです。

「え!?」とオレが驚くと、yukaは、
「私は初めて会ったのに、好きだって言われた」と。
「製図室から出ていった後か?」とオレ。
「うん、家帰ってくるとその人がいた」とyuka。

「なんなんだこれは・・・」の、もうオレとしても訳を飲み込めない状態。

その時に、オレは。

「もうオレの事は気にしなくていいから!今日の話は無しでいいから!」
「もうyukaも忘れてくれ!」

と言ってしまっていたのです。

告白からの夜の電話で言った「この言葉」が、後々に2人の関係をより複雑
にしてしまう。
自分が今思う、2人のターニングポイントだった。

そして、オレはそのまま電話を切り、深い溜息を付いて、
この当時は耐えられなかった「寂しさ」を、夜とともに煩悶する事に
なります。

これで2人の関係は終わってしまったんだなぁ。
なんで告白なんてしたんだろうか。
タイミングが悪すぎる。
なんでオレの事は気にしなくていいと言ったんだろうか。
自分の気持じゃないじゃないか。
この言葉がぐるぐると回る夜でした。

毎日続いていた、夜の電話もここで途絶えてしまい、そして製図室に行く事
も出来ないままで数日が過ぎ、文化祭を迎える事になります。

文化祭の日。同じ製作班だった事もあり、グループで作成した建築模型や
パース絵を、来訪者に説明しなくてはならず、その人数割を決める際に、
ひさびさにyukaと対面しました。

この時のyukaは、もう本当にダメだった。
表情、行動に全て「緊張」という言葉がぴったりくるほど、周りのみんなも
おかしいと気づくほど、態度がギクシャクしてたんです。

☆ここの話はyukaを書いていて、記憶が蘇った箇所です。
書いていると、あれだけ昔の一瞬の出来事でも、印象が強ければ思い出す
ものなんですね。
yukaとの出来事を思い出しながら書いているわけですが、こうやって
「新たに」という言葉が相応しい記憶の断片が蘇る事に、幸せを感じました

同じ班の利行が、オレとyukaに、
「◯時~◯時まで、2人で説明やってくれん?」と言った瞬間に、
ガッチガチのyukaが「あ。」と声を出したまま、止まってしまった。

オレは咄嗟に「その時間帯は人も少ないし、オレだけで大丈夫!」と、
言えたのが幸いして、大きな話にはなりませんでした。

そしてこの文化祭の昼。
大きな事件が起ったのです。

同じ建築科の宏明が、1学年下の後輩に殴られた。
それもパイプイスで頭を。
それも一般の来訪者が多数訪れていた、学校主催のランチスペースで。

多くの怒号と悲鳴が、1階から響き渡り、休憩中だったオレ達は同じ1階の
工作室でいたので、すぐさまその声で飛び出した。

すると、顔が真っ赤に染まった宏明が工作用の「角材」を持って、
フラフラになりながら、後輩を歩いて追いかけていた。

これはダメだ!!とみんなが思い、建築科のヤツらが宏明を止めに入った。
けれど、宏明は角材を振り回して、みんなを跳ね除け、後輩を追いかける。

ここで先生たちも加わり、なんとか事態は収まりました。

緊急にクラス会になり、担任から、
「オマエら進学や就職の大事な時だって分かってるのか!!」
「絶対に復習するなどという行為はやめておけ!!」と。

宏明自身は高校2年までは、建築科以外でも多くの仲間がいた。
しかし、ほんのちょっとしたトラブルで、友人が去ってしまい、
その中での後輩とのトラブルでした。

しかし、オレは宏明とはやりとりを続けていたんですね。

オレはこの時期に進学先も就職先も、なにも全く決まっていなかった。
そして宏明の事があった。
そして・・・昨日のyukaの事。

もうどうなってもいいな。それならば、オレが敵を取るしか無い。

この時代、どうもでいい、どうなってもいい、という心が多くを支配して
いて、色んな重たい心の積み重ねを突っぱねる発散が欲しかった。

オレは黙って工作室へ降りて、学校の教材だった径の太い鉄筋の棒を
持って、宏明の代わりにオレが突っ込もうとしていました。

それを、同じ建築科の仲間に見つかり、押し問答。
バンドのメンバーだった拓也と国弘に掴まれて、倉庫に閉じ込められ、
鍵をかけられたんです。

友人にすれば、文化祭で揉め事を起こしてしまったら、みんなに影響を
与えかねない。ましてや、オレのこの先がこれ以上おかしくなって
しまったら駄目になる。というのがあった。

小さな倉庫に鍵をかけられ、閉じ込められ、この時のオレは言葉にならない
声で、ドアを叩き、暴れていました。

その時です。
「やめて!!聞いて!!」とyukaの声。

「今、私一人だから、話を聞いて」と。

突然yukaの声に驚きましたが、オレはすぐに、
「オマエがここを開けろ!!とにかく開けろ!!」と。

しかしyukaの声とは思えない・・・。
表現はとても悪いのですが、あのyukaが重く響くような声で、

「絶対に開けんけんな!!落ち着くまで絶対に無理!!」と。

「開けろ!」「アカン!」のやりとりで、互いに声が潰れるほどの大声で
喚き散らしている。

するとオレの「開けろ!!」の声しかしなくなった。

すると、yukaが、
「ホンマに・・・頼むけん・・・やめて・・・」と、泣き声でオレに訴えていた
のです。

今度は、今までyukaが泣いた所など見た事はなかった。
それと、余りにも大声のやり取りで、物凄い疲労感に襲われた。

オレはその場でへたり込んで、黙ってしまいました。

yukaが、黙ってしまったオレを気遣って、
「どうしたん?いけるん?」と聞く。
オレは
「なんか・・・もう・・・疲れたわ・・・」と。

気づくとオレも泣いていました。
凄く辛かった。
全部辛いことを思い出した。
その中にはyukaの事は頭に無く、なんか・・・全ての事を思い出して、
とにかく泣きました。


ゆうさん



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