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産後パパ育休(出生時育児休業)が10月1日より開始されます。

育児と仕事の両立が困難であるという認識が世に広まり、男性が育児休業を取得するように求められてから久しい。
その中で、育児・介護休業法の改正により、令和4年10月1日より新しく産後パパ育休(正式名称:出生時育児休業)が実施される。
今回は産後パパ育休について紹介したい。
なお、なるべく条文に基づいた表記としているため、読み進めることに疲れる方は最後のまとめ部分にざっくりと記載しているそちらを参考にされたい。

■そもそも育児・介護休業法とは?

今回の産後パパ育休の内容について根拠法令となるのが「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」であり、通称「育児介護休業法」と呼ばれるものである。
働き手である方が育児や介護を理由として退職してしまうことを防ぐために、これらと仕事を両立できる環境整備を促す制度を規定したものが本法令である。
余談ではあるが、働き手にとって育児・介護に関連する法律は多岐にわたり、「労働基準法」「雇用保険法」「健康保険法」などがあり、育児介護休業法と密接に関わってくる。

■従来の育児介護休業法の制度

これまでの育児介護休業法では、大まかにいうと以下の内容が規程されている。
・育児休業制度
・介護休業制度
・子の看護休暇
・介護休暇
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
・所定労働時間の短縮措置
といった内容である。
時間外労働や深夜業などの労働時間に関して一定のルールを定めることで、働き手が育児や介護に参加しやすくするように規定している。
そして、この度、2022年10月1日より新しく「産後パパ休業(出生時育児休業)制度」が追加される。

■産後パパ休業(出生等育児休業)制度とは?

上記に記載のとおり、従来も男性にも育児休業制度は規程されているが、産後パパ休業とはどのような点で異なるか解説したい。
育児休業制度は、子が1歳(最長2歳)に達するまでの間、休業することができるという制度である。
今回の法改正は産後パパ休業が制定されるに伴い、育児休業制度にも改正点がある。
従来は育児休業を分割して取得するには「子の出生から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内」に父親が育児休業を取得することが要件とされていた。
そして、この分割された休業は、子の出生から8週間を経過する日の翌日以後に限られていた。
それが、今回の法改正では「子の出生から8週間を経過する日の翌日までの期間内でも」合計4週間分を2回に分割して取得することができるようになった。
これが今回規程された「産後パパ休業」である。
つまり、この規定により出産直後や退院直後で慌ただしい時期でも男性が休業することができ、家庭における負担を夫婦で協力できるようになるのである。
さらに、子の出生から起算して8週間を経過する日の翌日から子の1歳到達日までの間においても、母親も父親も育児休業を分割できるように規定された。
これにより、夫婦で育児休業を交代できる回数が増えることになる。

■産後パパ休業期間には給付金が支給される

この産後パパ休業の制定に伴い、休業した方には雇用保険法による「出生時育児休業給付」が支給されることとなる。
具体的には「子の出産日または出産予定日のうち早い方」から起算して「出産日または出産予定日のうち遅い日から8週間を経過する日の翌日」までの期間内に4週間(28日)分の休業した日数だけ支給される。
ただし、分割回数は2回までであるため、3回に分割した場合、休業日数が合計28日分以下であるとしても3回目以降の休業分に出生時育児休業給付金は支給されないため注意が必要だ。
なお、3回目以降にわたった休業や28日を超えた休業は、会社との合意があれば「育児休業」に振り替えることも可能である。

今回制定された産後パパ休業についてややこしいことの一つとして支給要件が挙げられる。
支給要件に「休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業している 時間数が80時間)以下であること」という要件がある。
ここに規定されている「休業期間中の就業日数が、最大10日以下」という要件は、産後パパ休業を28日分休業を取得した場合のことであり、休業期間が28日以下の場合は支給要件となる就業日数も比例的に変化する。
たとえば、産後パパ休業を14日間分の休業を取得した場合、支給要件となる就業日数は「最大5日間以下」といった具合である。

支給額については従来の育児休業給付金と同様、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(上限28日分)×67%」である。

支給申請時期は、子の出生日(出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日)から8週間を経過する日の 翌日から申請可能となり、当該日から2か月を経過する日の属する月の末日までである。
申請する際に必要な書類は以下のとおりである。
・「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」
・「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」
・賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、タイムカード、育児休業申出書、育児休業取扱通知書など (出生時育児休業を開始・終了した日、賃金の額と支払状況を証明できるもの)
・母子健康手帳、医師の診断書(分娩(出産)予定証明書)など (出産予定日及び出産日を確認することができるもの) これらのものをハローワークに提出することとなる。

■まとめ

上記にわたり産後パパ休業(出生時育児休業)とそれに伴う出生時育児休業給付金の概要について紹介してきた。
法律の条文を引用しての表記であったため、読み進めるのに疲れた方もいらっしゃると思われる。
そのため、まとめでは例外規定や細かい規定を除いてざっくりとした表記で記載したい。

今回の法改正に伴い、令和4年10月1日より「産後パパ休業(正式名称:出生時育児休業)」が、それに連動する形で「出生時育児休業給付金」が制定された。
育児関連の規定は多くあり、混同することが多いため、次のように分けて考えると理解しやすい。

・出産から8週間まで(産後パパ休業)
・産後8週間から子どもが1歳になるまで(育児休業)

それぞれについてざっくり紹介したい。

<出産から8週間まで>(産後パパ休業)
出産から8週間までの間、産後パパ休業を取得することができるようになった。 さらに、2分割の期間に分けて取得することができる。
ただし、2分割の合計日数は4週間(28日)が上限となる。
この間、出生時育児休業給付金を支給されることとなる。
ただし、産後パパ休業を3分割に分けた場合におけるその期間や、28日を超える休業した期間は支給されない。
また、産後パパ休業期間が28日以下の場合、支給要件も変化する。
出生時育児休業給付金の支給額は、給料の約67%が支給される。
これにより、経済的支援や育児と仕事の両立を支援することを目的としている。

<産後8週間から子どもが1歳になるまで>(育児休業)
男女ともにそれぞれの育児休業を分割して取得することができるようになった。
それによって、夫婦が交代で育児休業を取得することができる。

以上が今回の法改正のざっくりとした内容である。
SDGsや多様な働き方が求められている昨今、本記事が経営者の皆様や労務担当者の皆様のお役に立てれば幸いである。

[参考文献]
厚生労働省:
「育児休業給付の内容と支給申請手続き」https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000986158.pdf

「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/000977789.pdf

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html


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