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すべて煙で消えればいいのに。

こんばんは。なんだか急に肌寒くなりましたね。
せっかくあたたかくなってきたのに、布団から全く出られない、出たくない…
これが三寒四温ってやつかと思って調べたら、2、3月にしか使わない言葉みたいですね。
4月の時の方がそういう天気多い気がしますけど。また一つ学びました。

今回は、#だからそれはクリープハイプ にちなんで、私がとても大切にしているクリープハイプの曲を1つ紹介します。

「禁煙」という曲です。

HE IS MINEも、左耳も、蜂蜜と風呂場も、鬼も、クリープで好きな曲を挙げたらキリがありません。聴いてて超ぶち上がります。
でも禁煙は、どの曲よりも思い入れがあって、自分の心に留めておきたい特別な曲なんです。


去年の今頃、2022年4月。私は恋人に別れを告げました。

背が高くて、人懐っこくくしゃっと笑って、黒髪にパーマでまるで大きなトイプードルみたい。
一つ年下のくせに、敬語とタメ口を混じりながら話しかけてくる彼。
でもどこか憎めない。そんなところも生意気だけど可愛いと思っていました。

彼と一番印象深いものは、煙草でした。
電子タバコと紙タバコの二刀流。多い時は1日2箱。
元々依存体質な彼は、煙草にどっぷりで。
デートには決まって彼の煙草休憩がありました。
カフェの喫煙スペースだったり、コンビニの前だったり、居酒屋の前のベンチだったり。
「また煙草か」と思いながらも、煙草をふかしながら話す彼との時間も悪くなかった。むしろ好きだった。

彼はよく「ねえ、俺煙草臭くない?」と聞いてきました。
そりゃ毎日何本も吸ってるんだから、煙草の匂いは染み付いていますよね。
でも、彼の柔軟剤のほんのりとした匂いと煙草が混じり合った匂いは、「ああ彼の匂いだな」と安心できたのです。
「ううん、大丈夫。私煙草の匂い気にならないから」
間違ってはいないけど、そんな貴方の匂いが好きなんだよ、って伝えられたらよかった。

今回は割愛しますが、彼への不安が積もりに積もった私が限界を迎え、別れを告げることになりました。
彼のことをちゃんと思い出したのは、別れてから1ヶ月後。
その前までは、彼のことを思い出したくもないと、LINEやらインスタやらあらゆる連絡手段を切り、思い出に蓋をして、友人とずっと過ごしていました。
しばらくして一人でいる時間が少し増えて、失恋ソングを漁るようになりました。
彼、と思い出して一番浮かんだのは煙草。そんな時に見つけた曲が「禁煙」でした。
クリープハイプの曲はいくつか知っていたんですが、当時はこの曲は知らなくて、「へえ、クリープも煙草テーマにした曲出してるんだ。聴いてみよ」という軽い気持ちでした。

「情景が目に浮かぶ」ってまさにこういうことなんだ、と思いました。
彼のくしゃくしゃの笑い顔も、煙を吐いた横顔も、夜一緒に歩いたコンビニまでの道も、すべて鮮明に思い出される。
煙草をやめさせようとする、やめないやりとりも、以前の私たちにそっくりで。
彼も、「俺はこんなんだから、煙草吸ってもいいの。君はだめだよ」と言うタイプでした。
自分の価値を下げて、それに心地よさを感じている。歌詞の彼と重ね合わせていました。
自己最短記録で別れたけれど、どんな人よりも本当に楽しくて苦しい濃密な時間だった。他愛のない話も、ご飯を食べた後の散歩も、なんでもない時間がその頃はキラキラして見えた。

この曲は煙草が二人の関係性をよく表しています。

ずっとじゃなくて ジュッて音がした

禁煙 / クリープハイプ

この歌詞も、ジュッと煙草の火を消す=関係性を終わらせる、別れることなのかなと思っていて。そのジュッという音も、ちゅってキスの音にも聞こえたり、聞こえなかったり。
煙草というモチーフから、こんなにもリアルな恋人関係を表すことができることに脱帽でした。自然と涙が零れていました。

しばらく禁煙ばかり聴いて、ちょっと思い出して、泣いて、また聴いて、泣いての繰り返しでした。
もっと大切にできればよかった。あのくしゃくしゃの顔をもっと見たかった。
こんな思いも煙みたいに消えてくれれば楽なのに。目が腫れるまで泣かなくて済むのに。
喫煙所を通りかかる度、彼の匂いを思い出してしまう。
もう彼に対しての思いは薄れたはずなのに、その癖がしばらく抜けませんでした。
匂いって本当に厄介ですね。

そしてまた一年が経って。彼が今どうなっているのか、友人からたまに小耳に挟む程度で、実際はよくわかってはいません。
別れたては彼の曖昧な態度にムカついて、彼の存在ごと煙のように消えちまえばいいと思っていました。私もまだまだ子どもでしたね。
今ではもう彼を思い出して泣くことはめっきりなくなりました。もうそれどころじゃないくらい、周囲の友人たちといることが楽しすぎてハッピーなんですよね。

多分この曲は、彼との思い出テーマソングとして私の中に刻まれると思います。
クリープハイプの音楽って誰かの思い出に寄り添ってくれる、思い出に浸らせてくれる時間をくれるんですよね。そこが大好きです。
こんなドンピシャな曲作んなよ尾崎世界観、最高じゃないか。
もしこの曲が生で聴けたら、また彼を思い出して泣いてしまうでしょう。煙草の匂いと一緒に。

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