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個性はふつうの先にある
もしも子どもの頃のわたしにアドバイスができるなら。
声を大にしていいたい。
個性的になろうと思っちゃダメ!
みんなと正面から戦っても勝てないと気づいた。そして勝てる土俵(ジャンルみたいなもの)を見つけようとした。ここまではよかったんです。
でも小学5年生当時のわたしはいま以上の超・お気楽&超・短絡的思考。勝てる土俵を見つける=みんなと違うことをすればいいじゃん! みんなと正反対のことして、みんながやっていないことをやればいいじゃん! と思ってしまったんです。
結果、バイトを3つ掛け持ちしたり、ロリータを極めたり、会ったこともないジョン・F・ケネディ(第35代アメリカ大統領)を崇拝しはじめたり。人と変わっていることや個性的であることがなによりも大事で、ふつうであることは悪いこと、価値がないことだとすら思っていたんです。
この考えが180度変わったのが、コピーライターとして仕事をはじめたとき。
*変わったというよりは「崖から突き落とされた」感じに近いので青天の霹靂(へきれき)のほうがイメージにあってるかもしれません。
正直なところ、広告をつくることには自信がありました。やったことないくせに。人と違うこと、変わったこと、おもしろいことをいつも考えているんだから絶対できるでしょ、ってタカをくくっていたんです。
で、どうなったか。
いやー、書けない。
先輩に確認してもらえば大量の赤(修正)がはいって戻ってくる。しかもそのすべてが納得できるものばかり。クライアントさんからも「これでほんとに効果がでるとは思えないんですが…」といわれる始末。なんとか形にできても今度は応募がこない。採用にもつながらない。
そんなぼろぼろのわたしに先輩がアドバイスしてくれたことが2つありました。
①「いい」と思う求人広告を写経する(書き写す)
②会社や仕事のことを徹底的に調べる
たったこれだけ? こんなんじゃすごい広告もおもしろい広告もつくれないよ? 先輩には申し訳ないですが、聞いた瞬間は否定的な言葉しか思い浮かびませんでした。
ですが「どの業界、どの仕事でも効果を出せる」といわれている先輩のおっしゃることです。聞かないわけにはいきません。
毎日、みんなより朝1時間早く出社し、いいなと思う求人広告を見つけて写経をすることにしました。ノルマは1日2つです。求人広告をつくるときはホームページの情報だけでなく可能なかぎりインタビューをしたり口コミも調べました。
これを繰り返すこと約3カ月。
キャッチコピーの作り方みたいな本も読んでないし、文章の書き方教室にも行ってない。それなのにいつのまにかできるようになっていたんです。応募もちゃんとくるし、先輩やクライアントさんからも褒められる。なんとなく「こうすれば効果がでそう」というのもわかるようになってきた。
でも…なぜだろう? なにも勉強してないのに?
さっそく先輩に疑問をぶつけてみます。
「はじめから人と違うことをやるなんてムリだよ。ほら、孫悟空だってはじめは亀仙人からかめはめ波を習っただろ? あれがなければ元気玉はつくれなかったんじゃないかな。写経したり調べるのは基本の型を身につけることなんだよ。基本ができていればオリジナリティなんてものは勝手に出てくるんだから。」
そっか。わたしはかめはめ波も出せないのに元気玉をつくろうとしてたんだ。そりゃムリだ。
あとから調べて知ったところによると先輩が話していたのは「守破離」の考え方そのものだったようで。学び/真似をして(守)、少しずつ応用や改善をして(破)、思うがまま新しいものを生み出していく(離)というアレですね。
広告制作でも、マーケティングでも、モテる方法(笑)でも。まずは効果が出る方法や上手くいくとわかっているやり方をやってみる。「なにか新しい方法」「ほかの人がやってないこと」を求められることはたくさんあるけれど、そういうものはふつうを極めた先にあるのだから。
個性的な人になりたいなら、まずは「ふつう」を目指さなくっちゃ。
だってそれが個性的な人になる一番の近道なんだから。
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