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私が構造設計の仕事を選んだ理由

私は現在大手の設計事務所で構造設計の仕事をしています。最近は仕事の成果がそれなりに出てきていて、今後の自分の成長のためにも次のフェーズに移行したいなという思いがあってこっそり転職活動をしています。

ちょうど振り返りの時期に来ているなということで、私が就活の時になぜ構造設計の仕事を選んだのかについて簡単にまとめておきたいと思います。

もし構造設計の仕事で悩んでいる人がいたら参考になるかもしれません。それでは早速始めていきます。

自分のできることから決めた

私が構造設計の仕事を選んだ大きな理由は、「市場のニーズがある職種」かつ「自分のできること」の2点を満足していたからです。


・市場のニーズから考える

私が就職活動をしていた時期は、ちょうどリーマンショックと東日本大震災での就職求人数低迷から立ち直るかどうかの瀬戸際でした。

当時、構造設計の仕事や構造設計者の世間的な認知は、2005年11月に発覚した「構造計算書偽造問題(通称:姉歯事件)」であらぬかたちで一躍有名になり、業界的には「構造一級建築士」の創設で一気にニーズが高まりました。

耐震性を気にかけるクライアントも増え、耐震診断や耐震改修など構造設計者主体の仕事も登場しました。この先、需要がなくなることはないため食いっぱぐれることはないと実感しています。

・自分のできることから考える

一方で、設計職の中でも構造設計を選んだのは、「自分ならできそうだな」と感じたのが主な理由です。設計職の花形といえば建築の見た目を扱う意匠設計者ですが、私にとってはかなりハードルが高かったと記憶しています。

当時、意匠系で大手の設計事務所に就職しようとすると、

・大手の設計事務所に数多く輩出している大学の研究室に選抜される
・コンペなどの表彰実績を積む
・高いプレゼンテーション能力を持つ

あたりが重要視されていて(就職している職場の同僚を見る限り痛感します...)、大手でお金を稼ぎながら実績を積んでいくのは厳しそうだなと感じていました

その点、構造設計をはじめエンジニアリング系の職種は、その人個人の力よりも先人たちの知恵を借りながらモノを作っていくため、努力すれば実力をつけていくことができます

再現性も高いので努力して知識を身につければ、大手の設計事務所に就職することも十分可能です。また、専門性を生かして設計以外の稼げる職種にチャレンジできるのもエンジニアリング系の魅力のひとつといえます。

実績は就職してから身につければいい。

当時そう思い、実際に働いてから実績を積み上げることができました。


好きを仕事にするのではなく「できること」を基準に

最近は、SNSなどを中心に「好きを仕事にする」を合言葉に使っている人を目にします。

「好きを仕事にする行為」そのものを仕事選びの基準に据えることは本人の自由ですが、「好き」というのは感情なのである日突然「嫌いになる」ことも十分に考えられます。

仕事のしんどい面・つらい面が明るみになって嫌いになったというのはよくあります。私自身、この仕事をしていてしんどい・つらいと感じたことは何度もあります。それでも続けられたのは「できる」を基準にして仕事をしていたからです

病気や怪我などの理由がない限り、「できる」→「できない」となるのは難しいです。もちろん、この業界では心の病に陥ってしまい「できない」となってしまうケースはよく起こるので、普段からのメンタルケアは必須といえます。

お金を稼いで生計を立てることを考えるなら、まずは「できること」を基準に据えてみてあとから好きになっていくというのが理想ですね。


「やりがい搾取の罠」に気をつけよう

ひとつ注意点があります。

それはあなた自身が好きを仕事にしていなくても、周りの人が好きを仕事にしている場合が意外と多いということです。

どうしても設計という職業柄、クリエイティブ系の仕事なので、

 設計の仕事 = 建築オタクみたいな趣味 = 好きでやっている

という人は一定数います。特に意匠系の人が多い印象です。長時間労働も厭わない精神で仕事を進め、なかにはやりがい搾取をしてくる人や事務所の上の人がいたりする場合があります。

最近は働き方改革の影響で以前に比べてマシにはなってきていますが、大手・アトリエ系問わず「長時間労働でたくさん検討することを美徳と考える」「やりがい搾取を強要してくる」人は存在するので、自分の身体を壊さないためにも注意を払い、なるべく関わらないようにするのが賢明です。

もし会社全体の組織体制がそのような構造になっているのであれば、速やかに転職したほうがいいでしょう。その会社に留まって得られるものはほとんどありません。さっさと見切りをつけるのが吉です。


専門性を身につけて努力したいなら構造設計はおすすめ

私のこれまでの経験からいえば、構造設計の仕事はスタートラインのハードルは意匠設計に比べて低いと思います。

・鉄骨造、鉄筋コンクリート造、木造など設計手法が確立されている
・書籍やセミナー、ネット情報など1人で調べる方法がそろっている
・専門性を身につければ独立して大きく稼ぐこともできる

仕事の需要はなくならないし、努力すれば誰でも身につけることができるので、特段センスや才能がないと悩んでいる人の救いになるのではないでしょうか。

とはいえ、どの職種でもいえることですが、「好きでやっている人」は一定数いて、彼らに真向勝負を挑んで勝てる見込みはありません。私自身、なんでも暗算でスラスラ解ける人や、新しいアイデアで構造モデルを組み立てる人にはとても敵いません。

それでも業務はこなせるし、実績も作ることはできます。

そのまま専門性を磨いて構造設計のプロを目指すのもいいし、ステップアップの足がかりとして挑戦してみるのもいいと思います。なので専門性を身につけて働きながら学ぶ意欲が高いのであれば構造設計の仕事はおすすめです


就職先選びはいろいろ迷うことが多いですが、実務者からのひとつの参考意見として読んでいただければ幸いです。

それでは、また。

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