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#2 『文豪の凄い語彙力』山口謠司著 〜ゆるり書評〜

※ポッドキャストは現在録音苦戦中の為、しばしお待ちを。



正直、1作書いただけでエネルギーをほぼ全消費してしまいました。
慣れるまでは仕方ないですね。ただモチベーションは高いままですのでご心配なきよう。
では今回取り上げるのは、



『文豪の凄い語彙力』山口謠司著



でございます。
著者の山口謠司氏は長崎県生まれで大東文化大学文学部教授を務める傍ら、言葉についてや多くの文章を残した文豪にスポットを当てた著書を多く書かれております。

今回も以下3点にポイントを絞ってゆるりと評してみようかと思います。

◆言葉の成り立ちとは、単語の成り立ちに立ち返ること。
◆脱線すること、想像を膨らませること。
◆言葉を扱う、ということの重要性と難しさ。

では早速、ゆるりと参りましょう。



◆言葉の成り立ちとは、単語の成り立ちに立ち返ること。

まずは本書の構成に触れておきましょう。

①取り上げる言葉(=例題)と引用文の著者名
②例題が実際に使われている一部文章の引用
③例題の解説
④取り上げた著者の紹介

上記の構成を1つの例題当たり3〜4ページほどを1センテンスとし、計63の言葉を取り上げています。
まず短時間で読むのに丁度よく、私自身も移動の電車内や休憩時、就寝前に少しずつ読み進めました。

ただこうしたコンパクトな文章の中に詰め込まれている情報量には感嘆の一言に尽きます。
まず言葉の成り立ちを丁寧に解説されており、普段何気なく使っている言葉(特に漢字)それぞれには成り立ちがあった上で意味を持っている点。更にそうした言葉をここぞというタイミングで最適解として使うことが出来ている文豪の知識の深さを感じずにはいられない訳です。
またそうした言葉が最初期に使われていた古文や漢文に触れ、類義語や反対語など周辺の言葉を用い比較しながら普段は考えの及ばないであろう“もう一歩深い”考察まで柔らかな文章で書かれています。



◆脱線すること、想像を膨らませること。

先程述べた構成の話だけを聞くと、気難しい本なのでは?と思われる方も多いでしょう。
しかしそれは違います。
実は本書をより魅力的にしているものは時に脱線し、想像を膨らまして著者がご自身の思うことをそのまま書かれている点です。ライトノベル的な視点でいけば、「萌えるぅぅぅぅ!!!」といったところでしょうか。(この部分は本書の文庫版あとがきに寄せて書いております。)

ただ例題として挙げている言葉を解説するだけでは、只の解説書となってしまうところを、「そういえば」「ところで」「もっとも」といった接続詞を使って延長線上のエピソードから一目では関係のないエピソードが挟み込まれます。ユーモアを交えることを忘れていません。またそのほぼ全てがどちらかというとブラックユーモアの類である点尚更惹かれる訳です。



◆言葉を扱う、ということの重要性と難しさ。

本書を一通り読み、文庫版のあとがきに触れることにより、これまで読み進める中で感じでいたものを著者自らが言語化してくれています。それは言葉を扱うことは実に難しく尊いものである、ということです。
私自身も読み進めながら、往年の文豪が残してきていた文章を読み辛く感じる場面がいくつもありました。単純に読み慣れていないこともあるのでしょう。しかし問題は多くの日本語の原型とも言える古文や漢文に対する無理解さを痛感したことにあります。

取り上げられている言葉達はどれも美しく、生々しく響いていることを本書を通して感じるとともに、いかに文豪達が言葉というもの自体を深堀し、美意識を持って記し続けたかを感じずにはいられないのです。



今回はここまで。
色々整理立てて記しているつもりが、まとまりなく感じますね。ただゆるりと残しておりますのでご容赦くださいませ。

また本書を読めば必ず次はこれを読みたい、という本が見つかるはずです。個人的には川端康成や北原白秋は何かしら読んでみようかと思っております。
では、次回乞うご期待。



yururi

※作品情報
タイトル:『文豪の凄い語彙力』
出版元:新潮文庫
価格:税込605円

#ゆるり書評  #文豪の凄い語彙力 #山口謠司

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