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追い込まれたい西帝のゲーム紹介「マリア・マリア2」

追われてえ~~



ごきげんよう。斎藤・追い込まれる疑似体験をしたい・司です。

ゾンビに囲まれるのではなくて、あくまでも「人」に追われたい。ゾンビはなしでも、「ゾンビから逃げたショッピングモールで他の避難者から追い込まれる」のはあり。その金字塔といえば、みんなご存じあの鬱映画ですが、一応タイトルは伏せておきます。

とにかく「追い込まれ」、これが俺の癖(へき)です。

あらゆるフィクションは疑似体験なんでしょうが、その中でも「ゲーム」は、特にそれを楽しめる媒体ですよね。大好き。

追い込まれゲームとして一番有名なのは、なんだろうな、『かまいたちの夜』かな?

ジャンルとしてはミステリなんですが、プレイすると「めちゃくちゃ追い込まれる恐怖」を骨の髄まで叩き込まれますよね。ストーリーを全部知ってても、あのインターホン永遠に怖い。

クローズドサークルがそもそも「追い込み型」の構造なのに、自分の選択で行動を変え、それによって話が変わるというゲームシステムがマッチして、マジで怖いんだ。自分の足で暗闇に踏み込んでいく感じ、あれはゲーム特有の感覚ですよね。

このあとしばらくあけて『ひぐらしのなく頃に』がギガンティックヒットしたのは、やっぱり「追い込まれる恐怖」をみちみちに味わわせてくれるというのも大きかったと思うんですよ。追い込まれたいんだ俺たちは。

唯一の「警察官は(職務上)俺の味方」という命綱を、俺の行動によってぶった切るしかなくなるルート(祟殺し編)をかまされて、脳内麻薬がジャバジャバに出た。本当に味方がいねえ~。俺は狂った世界で一人ぼっち~。最高~。


ここから誰も知らないゲームの話をします


そして、そのふたつに挟まる時期に発売された、俺以外に誰も知らねえゲームが『マリア2 受胎告知の謎』です。

いや、ちゃんと全国区で販売されたコンシューマーゲーム(プレステ)だし、テレビCMも打っていたんだから、誰も知らんということはないはず。でも知っている人間をひとりも見たことがない。

前作の『マリア 君たちが生まれた理由』のほうがギリギリ知られてますよね。そっちも好き。

前作も2も、あえてストーリーは説明しません。あらすじにしてしまうと地味だから、俺が書いてもつまんないと思う。骨太めのサスペンスミステリ、あるいはクライムサスペンスです。

特筆すべきは「追い込まれる疑似体験」に焦点を絞ってきているとしか思えない、「追い込まれフェチ」のツボを完全に突いてきてくれる、その巧みでニッチな展開技法です。

『受胎告知の謎』は特にそれが濃い。

主人公は何もヘンなことに関わってない一般市民なので、最初は「厄介事に巻き込まれている知人を匿う」のほうから入るんですが、「これじわじわ自分もヤバいぞ」にシフトしてくる、あの感覚がたまらない。

1周目「逃亡編」では何も知らんうちにハメられ、指名手配され、どこから迫ってきてるかわからん黒幕に追い込まれる恐怖を味わい。

2周目以降の「究明編」では「ハメられを回避した状態」で、なおかつ「1周目とは別の脅迫要素」を受けつつ真相を解明していく快感を味わえる。
究明編に出てくる脅迫犯のチョイス、俺に刺さりました。だから究明編にだけ出てくるという説得力が美しい。

陰謀ものと言えばそうでもあるんですが、そう呼ぶには地味で、身近なリアリティを持たせてくるからかえって味がある。全然ハードボイルドじゃないからこそ怖い。

主人公はぜんぜん一人ぼっちじゃない、「信頼できる少数の友人や知人」がいるから、ビビりすぎずに、それでいて「だからこそ」の不安も付与されて、クライムとサスペンスのバランスがいいんですね。

すごいんですよ「巻き込まれていく湿度しつど感」が。ゲームとしてはそんなに作りが凝っているわけではないんですが、シナリオでこちらの身辺に真綿を巻いてくるというか、「じわじわ締まってくる感じ」が濃厚に味わえる。

これは前作「生まれた理由」でよりしっかりと敷かれている手法で、そっちは「……いつの間に俺の足元にまで来てたの!?」という恐怖がエグかった。

読みやすく地味で堅実なテキストだからこそ、ふんふんと読み進めるうちに「少しずつじわじわ深みにハマッていた」と気付く。「今どこにいんの俺!?」と怖くなる。一歩も動いてないはずなのに、俺の頭上にも足元にも暗闇が広がっている。


『生まれた理由』は、基本的にはテキストを読み進めるノベル寄りのゲームなんですが、一度だけ(ルートによっては二度)挟まる一人称探索パートがものすごく怖い。ホラーゲームかと思うほどの「もう一歩も歩きたくねえ」という不気味さがある。
俺は「民家に忍び込む」というフェチズムも持っており、そこも突いてきてくれるので、いよいよど真ん中に刺さったのかもしれない。

この堅実なテキストで読ませてくるライターのファンになったので、調べたら、『彼岸花』のデザイナーなのか。ライターとして参加している作品は少なくて、基本的には社員として名前を出してないタイプなのかな? 追うのが実質不可能でさみしいな。


アーカイブ移植も行われていないプレステのソフトなので、こんなに長文で良さを訴えてもどうにもならない気がしますが、もしプレステ持っててディスクも入手できそうという「追い込まれフェチ」の方は、やって損なしと思います。サスペンスとして隠れた良作です。

『受胎告知の謎』は探索パートがマジでめんどくさいので、逃亡感をあきらめて「いつの間に俺はこんなところに感」を楽しむなら、『生まれた理由』のほうがおすすめかな。

『生まれた理由』の探索で詰まったら、引き出し何度か調べてみてください。調べるたびに引き出せる段が変わります。



以下「マリア 君たちが生まれた理由」のうっすらとしたネタバレ考察




「カルテを送ったのが誰なのか」は、結局、どのルートでも明かされませんよね。しかしいくつかのエンディングできっちり「謎ですね」と言い合っているので、作者が意図した謎なんですよ。作中の情報から答えがわかるようになってるはずです。

というか、あらゆる情報を整合すると、該当する人物が一人しかいない。

「そのカルテに関わる立場におり」「そいつの不正を暴いてやろうという動機があり」「正義感からであったかもしれない」、三方向からぴったり嵌まる人物が一人だけいる。

正確には太田もギリギリ該当するんですが、普通に違うでしょう。動機が弱い。少なくとももう一人のほうよりははるかに。彼女がこれほど的確な送り先を選べたとも思えない。インテリ層でしょ、この送り先を選べたのは。

俺はこういう「語られないけどハッキリしている事柄、ハッキリしているけど語られない事柄」にもフェチを持つので、しびぃ~(渋い)と感じ入りました。

そもそも「その人物について」、描写がものすごいタイトなんですよね。噂話からわずかに知るばかりで、別に俺自身はその人物の内面とかを知らない。ちょっと嫌な感じぃ、という外側だけを知っている。でもそれがその人物のすべてでは、もちろんない。

しびぃ~(渋い)。


→おまけ



→俺のほかの語り


→他の血縁者の語り

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