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【講師インタビュー④】「ずれること」が、ずっと怖かった〜高田麻里さんの場合〜

こんにちは! 不登校を乗り越えた経験者が運営するNPO「家庭教師のYURUMI」 編集部です。

今回は、講師の高田麻里さん(仮名)にお話を伺いました!

麻里さんはずっと、人目を気にして怯えていました。そんな麻里さんの得た気づき、そして、今後への決意は──。自己肯定感の低さに苦しむ人へのメッセージも、あわせてお送りします。

高田麻里(たかだ・まり)
中央大学
指導科目:中学国語・数学・英語、高校国語

1. 人目を気にしていた高校生時代

──麻里さんの生きづらさの原因は、人目が気になってしまうことでした。「原因は私の育てられ方にあります」と、麻里さんは言います。

「最初に言っておくと、親はまともな人でした。……が、固定観念がすごく強くて……親の価値観と違うことを言うと、『口答えするな』と言われるんです。そこから、『自分は人とずれているんじゃないか』という恐怖感が生まれました。

わからないことがあるのが怖くて、波を立てるのが怖くて……何があってもニコニコして聞き流してしまうんですよね。今は多少コントロールができるようになりましたが、まだ怖いです。どうしても『自分は人とずれている』と感じてしまい、発達障害や愛着障害も疑いました」

──麻里さんが人目を気にするようになったのは、高校生の頃でした。高校生の頃の麻里さんは、いろいろなことで苦しんでいました。

「小中の頃は、なんか全能感に守られていたんですよね(笑)仲良い友達もいたし、成績も良かったし。でも高校では、小中ほど仲良い友達もいなくて、成績も別によくなくて……そういう鎧がとっぱらわれたときに、自信が持てなくなって。それで、人目が気になるようになりました。

あとは、本をよく読んでいたからか、自分自身をメタ的に客観視する癖があって。本って、主人公が変な振る舞いをしたことで困難に陥ったりすることがあるじゃないですか。それと同じ目を自分に向けてしまうのも、苦しかったですね。『自分今馬鹿なことしてるな』みたいな。

それから、人目を気にして八方美人になってしまうことそのものも辛かったです。好きではない相手にも優しくしてしまったり……向こうが喜んでいるのを見ると、罪悪感を感じてしまって。でも、やめられなかったんですよね」

2. 発達障害への関心が、自分にとっての大きな一歩に

──そんな麻里さんは、あることがきっかけで、発達障害に関心を持つようになります。そして、発達特性のあるお子さんを支援する団体でインターンを始めました。

「元々は労働問題への関心でした。そこから、適応障害と発達障害を知って、発達障害について調べ始めたんです。会社向けに『発達障害の人には、こうやって指示を出しましょう』みたいな啓発画像があるんですけど、見たことありますか?

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出典:札幌市「職場で使える『虎の巻』発達障がいのある人たちへの八つの支援ポイント」
URL:https://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/hattatu/toranomaki.html 

私はそれを見たときに『これめっちゃいいじゃん』って思ったんですよ。合理的というか。周囲とのずれに理不尽に怒られるのが怖かった私としては、明確に指示を出してもらえるとすごく楽なんです。

そこから、発達障害に関心を持ちました。自分も生きづらさを抱えていたので、普段生きづらさを抱えている発達障害の人の適応の仕方を知ることは、自分のためにもなりましたね。『発達障害の人が生きやすい社会は、私も生きやすい社会なんじゃないか』と思いました」

──「社会のために個人が犠牲になるのは、違うと思うんですよ」と、麻里さんは主張します。そんな麻里さんは、今、労働環境の改善に取り組もうとしています。

「よく言うじゃないですか、『周りに迷惑かけるな』とか。でも、なんで個人が社会に合わせないといけないんですか? 逆じゃないかな。個人が幸せになるために社会が動けばいい。『社会』には、それだけのポテンシャルがあると思います。

私にとっては、社会≒会社であり、労働なんですよね。だから、労働環境をもっとよくしていきたいです。だって人間は人生のほとんどの時間を労働に費やすわけですから、労働環境が悪かったら嫌じゃないですか! 一人ひとりの特性に合わせて、労働環境の方が対応できるような社会にしていきたいです」

──麻里さんご自身の生き方についての話も伺いました。「自分自身じゃなくて、環境を変えたら楽になった」と語ります。

「正直、私のこの性格はもうそんなに変わらないのかなって思っています。だから根本的な解決じゃなくて、環境を整えたい。

一番意識していることは、自分の意見をちゃんと言える場所を作ることです。どうしても意見を言う前に「否定されたらどうしよう」って思っちゃう自分がいるので、まずは安心して意見を言える小さなグループを作ります。

それで、先にそこで意見を共有して、批判でも意見でも承認でも、なんでも言ってもらう。そうすると「この意見を言ってもいいんだ」って安心できるので、そこかはら全体に向けて発信できる。

こんな感じで、自分の性格を分析して、自分がどういう環境に置かれたら一番いい振る舞いができるのかを調べています。まあ、トライアンドエラーですね!」

3.YURUMIで働くときに気をつけていること

──別の団体でもインターンをされている麻里さん。その経験を生かして、「YURUMIならでは」の点にも気を配っています。

「別のインターンだと、どうしても一人で複数人を見る必要があって……それに対して、YURUMIでは1:1で生徒を見られるので、『この子は将来のために、何を学んでおいた方がいいのか』をしっかり考えることができます。

学ぶって言っても、勉強だけじゃなくて。こういう社会経験を積んだ方がいいなとか、そういうことも考えます。他者との関わり方を、私との関わりを通じて覚えてほしい」

──いろいろなことを伝える中でも、麻里さんが一つ、絶対に気をつけていることがあります。それは「自己肯定感を下げさせないこと」。

「教えるときは、褒めることをベースに。何かを言わなきゃいけないときも、『生徒自身が全部否定されないように』という点を、いつも気をつけています。

例えば、問題を間違えたときは『ここまではよかったけど、ここだけつまずいちゃったね!』とか。宿題をやってないときも、本人を叱るんじゃなくて、解決策を一緒に考えていく。私自身が、自己肯定感の低さで苦しんだので……本人を否定しないように、常に気をつけています」

4.今、苦しんでいるあなたへ

「自己肯定感が低くなってしまっている人へ。根本的な解決とか、意識改革とかを目指すよりも、『どういう環境だったら自分が楽か』『自分が楽しいか』を考えてほしいです。

良い環境が確立できれば、別にわざわざ自分を変える必要はないんですよ。自分が何をしているときに、一番楽か。それを考えてほしい。

自分の環境を整備するために行動することは、わがままでもなんでもないです。自分がどういう場所で一番力を発揮できるか、それを一緒に探すためにYURUMIはいます。

だからどうか、申し訳なさなんて考えないで!」


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