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【講師インタビュー②】高校時代のいじめから、今、踏み出す第一歩

こんにちは! 不登校を乗り越えた経験者が運営するNPO「家庭教師のYURUMI」 編集部です。

今回は、講師のAさんにお話を伺いました!

咲さんは、高校時代にいじめに遭われていました。その経験から感じた教育や社会の問題点、そして、これから自分はどうしていきたいのか──。今苦しんでいる方と、その親御さんへのメッセージもいただきました。

Aさん(仮名)
指導科目:英語、国語
中学生以下は全教科対応OK


1. 高校時代、いじめに遭っていました

──「人間関係に不慣れだったことがきっかけで、高校でいじめに遭った」と話してくださった咲さん。さまざまな状況が重なり、つらい思いをされていました。

「高校でいじめに遭うまでは、典型的な優等生でした。家庭が厳しかったので、テレビやゲームもせず、友達とも遊ばず、空いている時間はずっとピアノを弾いている感じでしたね。その代わり、同年代の友達との関わりはかなり薄かったと思います。

でも高校で自分の時間ができて、これまでの交友関係のなさが、ちょっと裏目に出てしまって。他にも本当にいろんな事情が重なってしまったんですが、特に男子とうまく行かなくて……その結果、自分に関する嫌な噂、とりわけ男女関係に関する噂をいろいろ流されてしまったんです。全く根も葉もない噂なんですけど。

それがきっかけで、高1の頃にいじめを受けました。しかも自分についてのひどい噂が生徒の間で広まっている状態なので、高2高3になっても、誰が何を信じているかって全然わからないじゃないですか。影でずっとなにか言われている感じで、辛かったですね」

──しかし、その間ずっと高校に行き続けていました。当時のことを「他に対応の仕方がわからなかった」と振り返ります。

「今思えば、行かなきゃよかったんですよね。戦略的撤退と言いますか……だから実は、行き続けたことは全然いいことだとは思っていません。ただ、当時は、他に対応する方法がわからなかったんです。友達にもなかなか相談できなかったですし。

家も厳しかったし、親も仕事の関係で昼過ぎには帰ってくるので、黙ってサボることもできなくて。だから学校に行かざるを得なかったんですよ。あとは、休むと相手の主張を認めている気がして悔しかった、というのもありますね……」

──理不尽な思いをしたわけですが、「加害者が100%悪いわけではなく、教育システムにも問題があったと思う」という話もしてくださいました。

「恋愛とか、男女関係とかって、当時は面白いと思って囃し立てる子もいるじゃないですか。で、そういうことをしちゃダメっていうのも、別に教わらないですよね。学校では「科目」を教えることはするけれど、それ以外の部分は親に任されているところが多い。

UNESCOのガイドラインとかを見ると、たとえばLGBTQについてとか、人間関係・恋愛関係についても性教育などで扱うべきってされているんですよね。でも日本では教わらない。だから加害者が悪いわけでも、先生や親が悪いわけでもなくて、性教育や道徳教育が不十分なまま許容されている環境が本当は悪いんだろうなって思います」

2. 将来に向けた第一歩〜留学や移住という選択肢〜

「正直、不眠とか無気力とかの症状は今もまだたまにあります。最近病院に行き始めたので、少しずつ自分と向き合えたら良いなと思いますね。

不眠や無気力の背景としては、いじめ自体がトラウマになっているというのもありますが、社会全体の女性蔑視・軽視の風潮を見て悲しくなるから、というのも大きいです。自分の経験とも重なって、女性が軽んじられているのはすごく苦しいです。

でも、実は最近、ハムスターを飼いはじめまして(笑)。ずっと犬を飼っていたので、一人暮らしを始めてから喪失感があったんですが、それがなくなったら症状が改善したんですよね。それから、「別に日本にいなくてもいいんじゃない?」って思うようになりました」

「今は大学院を休学し、男女平等が進んでいる国への移住を考えています。たとえばカナダとか……まずは留学して、それから移住という形になるとは思いますが。そのために英会話を始めました。研究分野に関しても、海外で研究するなら、自分が本当に関心がある分野に変えてもいいかなと思い始めています。

今までやってきたことについ囚われてしまうんですが、考えが広がる視点が得られたのは大きいですね。私の選択を「逃げている」と言う人もいますし、私もそう思ってしまうこともありますが、全然違います。戦略的撤退です。合わない環境で無理してしんどくなるくらいなら、自分に合う環境に行ってから頑張ればいいんだと思っています」

3. 家庭教師として生徒さんと関わるときに大切にしていること

「現代を生きる上で、一番必要なのは「想像力」だと思います。で、「想像力」は、私は「なにもないところから突然浮かんでくるもの」じゃなくて、「知識を総合して考えるもの」だと考えているんですね。

伊藤若冲っていう江戸時代の絵師を知っていますか? 彼はかつて虎を描いたことがあるんですよ。でも若冲は、虎を見たことがなかったんですね。どうしたかっていうと、中国画を模倣して描いたそうです。その結果、なんか猫みたいなかわいい虎になったんですけど(笑)。

若冲は、虎を無から生み出したんじゃなくて、中国画から知識を得て描いたわけです。同様に、自分と違う立場にいる人のことを考えるとき……例えば今話題になっている黒人差別の問題だって、得た知識を総合して考えれば想像することができます」

「学校に行けば全部を学べるわけではありません。むしろ、『学校に行かないと得られないこと』って実はそんなになくて。想像力を養うために必要な知識のうち、学校では学べないものってたくさんあるんですよね。

だから、生徒さんの興味にもよりますが、国語とか数学とか、そういう教科の枠にはまらないような授業もしていきたいですね。自分の状況を客観的に捉えられたり、自己肯定感を得られるような授業を。学校に行っていないことを活かして、学校で教えてもらえないことも学んでもらいたいです」

4. 今、苦しんでいるあなたへ

「親子って、どうしても相手を「他者」として扱うのが難しい関係性だと思います。日本はそういう上下関係みたいなのができてしまう関係性が多いですよね、先輩後輩とか、上司部下とか……それは関係性の構造に問題があるんだと思うんです。私の家もそうでしたから。

だから、YURUMIの家庭教師やオープンダイアローグみたいに、講師が間に入りながら話すことで、違う構造での対話ができたらいいなと思います。もちろん生徒さんを第一に考えますが、親御さんもとても苦しんでおられると思いますから……対話によって関係性のサポートもしていきたいですね。

生徒さんとも、親御さんとも、1:1できちんと向き合っていきたい、と思っています。きっかけは私の経歴でも、オープンダイアローグでも、なんでもいいので……皆さんにとってYURUMIが、新しいきっかけになりますように!」


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