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【まっすぐに見えれば、それはリニアメント】ゆるく楽しむ日曜地質学:2024年7月21日号

仙台市はだんだんと暑くなってきました。
梅雨と言っても割と晴れの日も多く、おかげで庭の野菜たちも元気です!

リニアメントとは?

本編の「日本の歴史と地形&地質」では、長篠の戦いで奇襲のルートとなった山地に見られる直線状の地形を紹介しています。
こういった「直線状の地形」を専門用語でリニアメントと呼びます。

平凡社「新版 地学辞典」では、リニアメントについて以下のように解説されています。

直線または緩やかな曲線に配列する地形的な特徴

この後にも少し説明が続きますが、意味を表す文章としては、上記で十分かと思います。

なおウィキペディアでの解説は以下のとおりです。

リニアメント(英語: lineament)とは、リモートセンシングによる空中写真で地表に認められる、直線的な地形の特長(線状模様)のことを言う。

「リモートセンシング」とは飛行機・ヘリコプターや人工衛星を使って地上を観測することを指す言葉です。
現在は人工衛星で撮影した空中写真やレーザー計測等ありますが、昔はもっぱらセスナを使った連続写真撮影が主だったため、単に「空中写真」と呼んでいました。

上記で「空中写真で地表に認められる」と限定的に説明していますが、これは、「人間が地上で地形を見る限りでは気づかず、空中から撮影した写真を見てはじめて気づくもの」だったからです。
そういう意味では「ナスカの地上絵」みたいなものですね。

航空機による空中写真は部分的に重なる(60%程度)ように連続撮影されています。
この時、隣り合う写真では微妙な違いがあり、それは「撮影者との距離」によるものです。
つまり撮影者から近いものと遠いものとでは「ズレ幅」が違っており、それを使って標高差を割り出し、地形図作成に利用されていました。
また隣り合う空中写真を並べて「実態鏡」という道具を使って見ると、立体視することもできます。
(※裸眼でも立体視できる達人もいます)

昔ながらの「等高線」を用いた地形図では、微細な地形を表現することが難しく、地形図だけでは気づかず、空中写真による立体視でリニアメントが発見されることが多かったので、ウィキペディアではそのような説明になっているのでしょう。

しかし現在は空中写真を使わずとも、リニアメントを見ることができるようになりました。

西日本地域の地形図:スーパー地形より抜粋

さすが「スーパー地形」ですね。
パッと見ただけでも、あちこちにリニアメントが見えませんか?

西日本地域の地形図②:スーパー地形画像に筆者一部加筆

上図の赤点線は中央構造線です。

しかし「リニアメント=断層」と言うわけではありません
最初に紹介した地学辞典での解説「直線または緩やかな曲線に配列する地形的な特徴」がリニアメントですので、誰かが地形図を見て「ここ、何だか妙にまっすぐに見えるな」となれば、それがリニアメントです

しかしそうなると「天井の木目が幽霊の顔に見えてくる」ようなものも含まれて混乱してしまうので、専門家の場合は「地質学的な裏付けの確認」も含め、リニアメントと言う用語を使うのが一般的です。
しかし中には誰がどう見ても明確な直線状の地形に見えるけど、地質的な要因が不明な場合があり、そういう場合は単にリニアメントと呼ばれる場合もあります。

活断層は大地震によって「亀裂」として地上に顔を見せますが、その亀裂は時間が経過すれば侵食によって失われます。
そのため人間による地表踏査だけでは発見することは難しく、空中写真から発見されるリニアメントが大きな手掛かりになります。
ですので「気のせいかも?」なものならまだしも、「誰がどう見ても」のレベルのものなら、現時点で活断層と断定できずとも、「リニアメント」として記録されています。

今週の予告

先週は木曜日に「日本の歴史と地形・地質」のみの投稿になってしまいました。
まず記事投稿の予定を間違え、「日本の歴史と地形・地質」から執筆を始めてしまい、かつ調子よく2記事分も書いてしまったのが原因の1つです(笑)
またもう1つの理由として、岐南町周辺の調べものの最中に、非常に気になるものを見つけてしまい、そこに気を取られ、記事執筆が進まなかったと言うこともありました(;^_^A
それについては、今後の日曜地質学で紹介したいと思います。

と言うことで、記事2本中1本は書き終えていますので、以下の日程で投稿できるかと思います。

〇7/23 火曜日:日本の歴史と地形・地質
断層の侵食でできる地形:「長篠の戦い」を地形・地質的観点で見るpart5【合戦場の地形&地質vol.6-5】
※タイトル変更の可能性あり

〇7/25 木曜日:都道府県シリーズ 2週目
岐阜県のとある市町村について【都道府県シリーズ第2周:岐阜県】
※タイトル変更します

では、今週もよろしくお願いいたします。

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