地形変形を妄想すれば、沢の歴史が見えてくる【都道府県シリーズ第2周:岐阜県 山県市編no.9】
都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」の2周目。
岐阜県山県市の中部には、山県市を袈裟懸けに切るような真っすぐな谷地形が走っています。
※前回記事はコチラ👇
地形の変形をもっと詳しく
せっかくの面白い題材なので、武儀川断層の左横ずれ運動の影響で、どのように地形が変形したのか?詳しく検証しましょう。
ここでは「谷」と「沢」を別物として考えます。
現状で、各沢がどの谷を通って武儀川に流下しているのか、順に説明しましょう。
A沢:谷①から東に屈曲して谷⑤を流れ、B沢に合流
B沢:谷②を流れ、A沢との合流点から谷⑦を流下し武儀川へ
C沢:谷⑥を通り、D沢へ合流
D沢:谷③を流下し、C沢の合流点から谷⑧を通り武儀川へ
さて、ここから脳内で時間を巻き戻し、「左横ずれする前」の谷と沢の組み合わせを想像してみましょう。
武儀川断層より北側の土地だけが動いたと仮定してお話しします。
以前、谷①~④は現在よりも東にありました。
それぞれの谷が等間隔だとして、現在の谷と谷の間隔の半分だけ東にあった場合を想像してみて下さい。
A沢:谷①→⑤→⑦を通って武儀川へ。谷⑤は現在より短い。
B沢:上流と下流で分断。上流は谷②を通り、C沢に合流。下流はA沢の下流域となる。
C沢:上流が谷②とつながり、D沢へ合流。
D沢:谷③を流れ、C沢合流点から谷⑧を流下。谷⑧は現在は屈曲しているが、この時はほぼ直線状。
こんな感じですよね。
(※地形図は修正不可のため、そのまま)
今度は谷①~④を一気に谷1本分、巻き戻してみましょう。
谷①は谷⑦とまっすぐ繋がり、1本の沢になる。谷⑤は存在しない。
谷②は谷⑧とまっすぐ繋がり、1本の沢になる。谷⑥は存在しない。
谷③は谷⑨とまっすぐ繋がり、1本の沢になる。
どうでしょうか?
時間とともに移り行く谷と沢の流れを想像できましたか?
まだある変なトコ
ちなみに、もう1つ注目していただきたい場所があります。
黄丸の場所です。
この谷地形は現在は他と繋がっていないようですが、何かのきっかけで谷①を流れる水が入り込めば、谷①と一体となってまっすぐの1本の沢になりそうですよね。
実はこれがトレンチ調査箇所のナゾを解くカギなのです。
ここは山県市奥峠の変形地形と違い、大きく曲がった沢は1つしかなく、上流と繋がっていません。
そして北西の沢は曲がりが小さく、それぞれ多少の違いがあります。
加えて真ん中と東の沢(黄色)はほぼ真っすぐで、断層によると思われる変形を受けていないように見えます。
こう言った違いはどうして生じるのでしょうか?
この謎のヒントが上図の黄丸にありました。
次回に続きます。
お読みいただき、ありがとうございました。