見出し画像

面は重要!【地質のきほん:その5】

これまで地質の話をする中で層理面などの「〇〇面」という言葉が良く出てきましたよね。
「面」は地質調査をする上で重要なだけでなく、土砂災害の調査や資源開発、温泉開発をする上でも非常に重要です。
今回はそんな「〇〇面」についてのお話です。

※トップ画像は火砕流堆積物の成層構造:産業総合研究所より

面は色々ある

そう。地質には色々な種類の面があります。

例えば断層面などのように、大地にかかる力(プレートによる押す力や引っ張る力)によってできる面。
また層理面片理面などのように、岩石がつくられる過程でできる面もあります。

それでは、それぞれのを見ていきましょう。


断層面

その面の上下または左右の地層にズレが見られる場合、その面は断層面だと言えます。断層面だからと言って必ずしも危険な断層とは限りませんが、少なくとも過去に動いたことがあると言えます。

断層

断層調査の様子(産業総合研究所撮影)に筆者加筆(赤点線のみ)
出典:地震調査研究推進本部

上の写真は活断層の調査方法のうちの1つであるトレンチ調査(※溝を掘る調査)で見られる断層面です。
赤点線が断層面で、この上下で地層がズレているのが分かると思います。

この場合は断面なのでとして見えていますが、は下の写真のようになっています。

画像2

出典:産業総合研究所

これは岩盤に見られる断層面で、表面がテカテカしていますよね。
これは鏡肌(かがみはだ)面と呼ばれ、断層が何度も動くうちに、擦られてツルツルのテカテカになったものです。
木を目の細かいヤスリで擦るとツルツル・テカテカになりますよね。あれと同じです。

また左上から右上にのびた斜めのスジがいくつも見えますよね。
これは条線(じょうせん)と言い、断層の動きでできた引っかき傷です。
つまりこの線の方向に断層がズレたことを示しています。


堆積岩にできる面

泥や砂や礫、火山灰など堆積物が固まってできるのが堆積岩です。
雪国の除雪の壁を見ると雪の層が見えますよね。一度積もった雪の上にまた雪が積もって・・を繰り返して層になります。
堆積岩もそれと同じように層をつくります。

違う地層・・例えば砂岩の上に泥岩があったとしましょう。
この時の境界面を層理面と言います。
また同じ砂岩や泥岩の内部にスジができる場合もあります。これを葉理(ようり)面と呼びます。

層理面葉理面は地すべりのすべり面の原因になったりなど、土砂災害調査の時に重要なカギになります。

砂岩泥岩互層

出典:竹内ほか(2017)

これは砂岩と泥岩が互い違いに繰り返し重なっている砂岩泥岩互層です。左上から右下に多くの層理面ができています。
これを見れば「面に沿って分離しやすい」をイメージしやすいと思います。

画像4

出典:産業総合研究所

砂岩の内部に左上から右下にのびるスジがいくつも見えます。
これが葉理面です。


火山岩の面

火山岩にも面はあります。その代表格は冷却節理です。
物質は温度の違いで膨張したり収縮したりしますよね。
マグマが冷えると収縮し、その時に割れ目ができます。これが冷却節理です。例えば景勝地で見られる柱状節理も冷却節理の1種です。

画像5

出典:産業総合研究所

玄武岩の柱状節理。
まさに鉛筆を束ねたかのようなカタチです。まさに自然の造形美!

ちなみに冷却節理は冷えた面に対して垂直の方向に割れます。これを手掛かりに溶岩の方向を推定することもできたりします。


変成岩の面

変成岩の中でも地下深くで圧力の作用でできた結晶片岩類には片理面(へんりめん)という面ができます。
これは圧力の作用で、平板状柱状のカタチの鉱物が同じ方向に向きを揃えて出来る面です。

画像6

出典:産業総合研究所

これは泥岩が変成してできた黒色片岩(泥質片岩とも言う)です。
細かく面が発達しているのが見えると思います。
ハンマーのとんがっている方でほじくると、ペラペラと薄く剥がれます。
これも地すべりのすべり面の原因になったりします。


いかがでしたか?
まだ全てのを紹介できたわけではありませんが、イメージは掴んでいただけたかと思います。
地質を調べる際には地層の種類だけではなく、様々なも調査し、地質調査だけでなく、災害調査や活断層調査にも役立っています。

お読みいただき、ありがとうございました。


次の「地質のきほん」はコチラ👇


参考文献

竹内 誠・古川竜太・長森英明・及川輝樹(2017)泊地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1地質図幅),産総研地質調査総合センター,121 p.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?