KDDI「ジョブ型」雇用、金融・IT強化へ人事改革。


【KDDI ジョブ型雇用の導入】
KDDIは31日、正社員1万3千人に職務内容を明確にして成果で処遇する「ジョブ型」雇用を導入すると正式発表した。主力の通信事業が成熟するなか、金融やIT(情報技術)などの非通信の売上高を1兆5000億円に伸ばすため、専門知識を持った人材がより働きやすい環境をつくる。
 「時間や場所にとらわれず、成果を出せる働き方を実現する」。KDDIの高橋誠社長は31日の決算記者会見でジョブ型雇用について、こう強調した。まずは中途採用を対象に始め、労働組合との協議を経て2021年4月以降に全社的に順次導入する。賃金も見直し、新卒初任給も一律ではなく差をつける。

【通信はこれ以上成長が見込めない】
 KDDIが人事制度を見直すのは、主力の通信事業の成熟が背景にある。電気通信事業者協会によると、3月時点でNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社で携帯電話の回線数は約1億8千万ある。日本の人口を超えるまで普及し、急激な成長は見込めない。
 中長期的な成長事業と位置づけるのが金融やITだ。スマホを起点に決済や電子商取引(EC)など、生活のあらゆる場面で使える関連サービスをそろえる。金融やEC、エネルギーなど非通信事業に当たる「ライフデザイン領域」の売上高を22年3月期に1兆5000億円(20年3月期比25%増)に伸ばす。そのためにはジョブ型で社員の役割や適性を明確にし、より生産的に働ける環境が不可欠と判断した。
 新型コロナウイルスの感染拡大も背景にある。KDDIは出社率を3割以下に抑えている。ジョブ型は時間ベースの管理がしにくい在宅勤務とも相性がいいとされる。
 課題もある。4月に社員約8500人を対象に行った調査では、約5割が上司や部下とのコミュニケーションを取りづらくなったと答えた。通信設備やデータセンターの運用で出社が欠かせない社員も少なくない。金融やITなど事業の領域が広がるなか、ジョブ型雇用をどう効果的に運用していくかが求められる。

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