物流、世界で停滞、海運・航空、能力3割減も。

【国際物流 停滞 一部で運賃4倍に】
 新型コロナウイルスの影響で、海や空、陸の国際物流が停滞している。コンテナ船など海運は入港制限や船員不足で輸送能力が3割減るとの試算がある。航空は減便下で医療資材の輸送を優先しており、スペースが限られる貨物は運賃が一部で4倍に急騰。遅延が長引けば製造業の部品や機器の供給が細り、産業や生活に影響が出かねない。
 「小麦など穀物を運ぶ北米―日本路線などで数日の遅れが出ている」。海運大手の関係者は、船員の交代難による洋上輸送の目詰まりを指摘する。コロナの感染防止のため自国への船員上陸を拒む例が出ているからだ。

【コロナの影響でどうしても人を降ろせない】
海運大手ウィルヘルムセングループ(ノルウェー)の調査では、世界約120カ国のうち、自国港での船員交代を認めているのは日本や米国など37カ国・地域にとどまる。船員は最短3カ月で交代するのが一般的だが、コロナ問題以降、ベトナムやインドなどの港湾で人を降ろせなくなった。日本郵船は「1年以上降ろせないでいる船員もいる」と悩む。船員を交代できなければ労使協定上、船を動かせない。

【コンテナ船最大手 減便】
 経済収縮も遅れに拍車をかける。コンテナ船世界最大手のマースク(デンマーク)は4~6月、アジア―欧州間の全10航路のうち2航路を全便休止。通常時に比べて3割減便だ。米ジェフリーズは4~6月の海運輸送能力が最大3割減ると予測。1~3月の5~10%減から減速するとみる。
 異変は空と陸の物流でも起きている。 
航空コンサルティング会社のシーベリー・コンサルティングによると、旅客機の運航停止に伴い4月下旬時点で航空貨物の輸送能力は前年同期比で3割落ち込んだ。輸送能力が限られる一方で、医療物資の輸送需要が高まり、運びきれない貨物が発生。国際郵便などが各地で滞留している。
【中国~日本にかけての運賃急騰】
 医療機器大手キヤノンメディカルシステムズは中国などから部品を国内に輸入しているが「航空貨物は便数減で枠の取り合いになっており、料金が高騰している」(滝口登志夫社長)。上海発の欧米行き運賃は1キログラムあたり70元(約1050円)を突破。コロナ感染拡大前の4倍以上に跳ね上がっている。
 陸路の物流も欧州で停滞気味だ。各国の国境では健康チェックや感染予防策などを満たす必要があり、ルートによっては1~2日の遅延が起きている。企業の休業などで荷物が届けられず、物流倉庫や送り主への返送が増えていることも陸上輸送の混乱を招いている。


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