お店応援」1億円調達も、クラウドファンディング活用、ネット通じ資金迅速に。

【経営が悪化した企業へのクラウドファンディング】

インターネットで事業資金を募るクラウドファンディング(CF)が、新型コロナウイルス禍で経営が悪化した企業や個人商店への支援に活用されている。休業中の飲食店やイベントが中止になった団体などにとっては、公的な補助金が届くまでの手元資金に充当できる。購入型CFは需要調査としての側面も大きかったが、コロナ支援を機に活用方法も広がりそうだ。

【新型コロナの影響を受けた飲食店サポート】
 CFの仲介サイトを運営するREADYFORは日本商工会議所と組み、新型コロナの影響を受けた飲食店のサポートを始めた。各地の商工会議所がCFを立ち上げて支援金を集め、参加する地元の飲食店に配分して送金する。約90の商工会議所から問い合わせがあり、20日時点で約10が実施中だ。

【前売りが主流 購入者は、飲食券をもらえる】
前売り型多く 「潰れてほしくない店を手軽に応援できてうれしい」。埼玉県川口市に住む会社員の大瀧雄登さん(31)は12日、川口商工会議所のCFに3千円を振り込んだ。行きつけのバーのインスタグラムでこのCFを知り、支援先に休業中の同店を指定。6月下旬から3300円分の飲食券が届き、7月以降に同店で使えるようになる。
 飲食店支援のCFでは、こうした「前売り」が主流だ。割り増し分を負担し将来の需要を先取りしても、足元の資金繰りが厳しい店は一息つけるようになる。
 日本のCFは従来、企業が個人から事業資金などを募り、金利を支払う「貸付型」が主流だった。この流れがコロナ禍で大きく変わり始めた。
 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「国や自治体の助成金や補助金は手続きが煩雑で時間もかかるが、CFなら素早く資金が得られる」と指摘する。実際に支援を募る都内の居酒屋も「賃料など当面の固定費に使いたい」(40代男性店長)と話す。
 レディーフォーのサイトでは飲食店のほか、イベントが中止になった劇団やライブハウスなどが支援を求めている。4月の流通総額(支援額)は92%がコロナ関連だ。CAMPFIRE(キャンプファイヤー、東京・渋谷)でも4月の流通額が、前年同月比4倍の22億円に伸びた。

【クラウドファンディング 手数料下げる】
 最大の要因は「何か支援をしたい」人々の心をとらえたことだが、CFを始めるハードルも下がっている。仲介サイトの運営会社は、CFに取り組む事業者からの手数料が主な収益源だ。しかしコロナ支援がCF利用者の裾野拡大につながるとみて、手数料を引き下げる動きが相次いでいる。
 レディーフォーのサービス・決済手数料は原則12~17%だが、コロナ支援関連は減額。CAMPFIREもコロナ支援に限り、通常12%のサービス手数料を無料にしている。「コロナ支援で初めてCFを使う人が興味を持ち、他にも出資するなど利用を押し上げている」(担当者)

【1億集めた会社もある 飛騨牛、マスク】
 CFでは広く薄く資金を集めるため、1千万円以上の案件は珍しい。だがコロナ関連では1億円を集めたCFも目立つ。
 その一つが岐阜県高山市の飛騨農業協同組合(JAひだ)だ。観光客が減少し、ブランド和牛「飛騨牛」を卸すホテルなどが苦境に陥った。そこで生産者などを支援できるCFを立ち上げ、4月末から約2週間で1億1千万円を集めた。支援者には、約60軒の生産者が育てた飛騨牛を返礼品として発送する。
 寄付の仕組みとしてCFを使う例も増えている。医療支援のNPO法人ジャパンハート(東京・台東)は4月中旬、医療機関のマスク不足を解消するためにCFで支援を呼び掛けた。SNSで「#マスクを医療従事者に」と拡散され、開始から21時間という異例の早さで1億円を集めた。
 最終的には1日半で約1万5千人から約1億5千万円が集まり、すぐに約200万枚のマスクを約700の病院などに提供した。通常の寄付や募金との違いについて、ジャパンハートの担当者は「普段は情報が届かない人にも、CFなら現状を知ってもらえる。通常のやり方では4~5月に提供できなかっただろう」と説明する。

【自分にとって大事にしたいもの。】
 博報堂買物研究所の山本泰士所長は「コロナ禍でデマも含めて情報があふれすぎたことで、自分にとって信用したいものや離れていても大事な相手を浮き彫りにした」と語る。そのため、無くなったら困る飲食店やミニシアターなどを支えたい気持ちが募り、支援につながっているという。

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