政府危機感。車・ホテルの業績悪化を抑制、工場や店舗の会計ルールを柔軟に

【業績悪化で金融庁柔軟な対応を】
新型コロナウイルスの感染拡大で企業業績の悪化が懸念されることを受け金融庁は3日、店舗・工場の資産評価など会計ルールの弾力的な運用を議論する連絡協議会を設置した。需要の急減で自動車工場やホテルなどが生み出す利益が下がり、会計上の減損処理が必要となっても一律のルール適用は求めない方向だ。事業環境の激変を踏まえ、会計処理でも柔軟な対応を促す。

【経営の先行き 不透明感高まる】
 「上場企業の大幅な売り上げ減少など業績の見通しが立てられない状況が出ている」。麻生太郎財務・金融相は3日の会見で、コロナの影響で経営の先行き不透明感が高まっていると指摘。2020年3月期決算の作業が本格化する企業が多いことを踏まえ、会計ルールの弾力的な運用策について関係者で検討すると表明した。

【固定資産の価値を下げて、処理するか?】
 焦点の一つが店舗や工場など固定資産の価値を切り下げる減損処理だ。コロナの影響や政府の資金繰り支援策などを踏まえて事業の将来性を予測し、現行ルールの中で減損しない判断も認められるとする認識を共有した。
 会計基準によってルールは変わるが、資産を使って将来稼ぐ金額(キャッシュフロー)などが大きく減少したと判断された場合に減損が発生する。100億円の資産価値がある自動車工場を例に取ると、急速な景気悪化で販売台数が減り、将来稼げる金額の現在価値が40億円と判断された場合「工場の価値が下がった」として60億円を減損損失として計上する。
 減損を巡る判定は企業の会計でも最も難しい分野の一つとされる。企業と監査法人が事業の将来性などを議論し、資産の価値を算定する必要があるからだ。世界の経済成長や製品需要の伸び、為替相場など、様々な将来予想をする必要がある。「資源関連企業では、急落する原油が将来どのような価格で推移するかの想定で、資産の算定額が数千億規模で変動する」と大手監査法人の公認会計士は打ち明ける。
 

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