営業・接客「脱対面」広がる、家電や車、在宅勤務浸透で、女性・高齢者働きやすく。


【オンライン接客を取り入れる ビックカメラ】
 新型コロナウイルスの感染問題で人との接触を避ける動きが広がるなか、対面を前提としてきた販売や営業の遠隔実施に企業が取り組み始めた。ビックカメラなどは商品の説明にビデオ会議を採用する。一部住宅や自動車でもオンラインの接客を導入した。在宅勤務の活用で、女性や高齢者など多様な働き手の受け皿にもなっている。

【来店客の呼び出しに応じて説明する】
 ビックカメラはこのほど英ダイソンの日本法人と提携し、有楽町店(東京・千代田)など一部店舗でビデオ会議システムを使ったお客への遠隔接客を始めた。ダイソンの販売員が来店客の呼び出しに応じて掃除機などの機能を他の場所から説明する。ノジマもオンラインを活用した遠隔での接客を検討している。

【オンライン接客でもモデルルームは見学できる】
 新築の分譲マンションのオンライン見学会を6月から始めたところ約1カ月で200組の参加を集め、20組程度の成約を得たのが住友不動産だ。顧客はモデルルームを訪れることなくウェブ上で物件紹介や周辺環境の情報、モデルルームの撮影動画を視聴し、販売スタッフと住宅ローン相談ができる。契約書や鍵の引き渡しも郵送で済む。
 
【お店に行かずに車を買える 全てオンラインで完結】
 似た動きは車の世界にも及ぶ。BMW日本法人は7月末から販売店に行かずに車を購入できるネット販売を全国で大半の車種を対象に始めた。車の検索から納車までをオンラインで完結できる。商品説明などの接客はビデオ会議で応じる。
 アステラス製薬は営業の仕事をオンライン化した。6月から、医薬情報担当者(MR)がウェブ上で医師と直接やりとりができる営業ツールを導入。全国の医師の9割にあたる28万人以上へのアクセスが可能で、新規顧客をオンラインで開拓することも可能になった。
 金融では第一生命保険が年度内にも約40億円を投じて営業職員にスマートフォンを配布。ビデオ会議で保険契約を終えられる体制を整える。
 「脱対面」の広がりはデジタルインフラの普及が大きいが、新型コロナで在宅勤務が常態化しつつあることも要因の一つ。その結果、起きているのが働き方の多様化だ。

【一部の販売員は、自宅からビデオ通話で接客を】
 化粧品大手のポーラは一部の販売員が自宅からビデオ会議で接客している。「小さな子どもがいたり家族の介護を抱えていても働き方の自由度が増す」という。8月から管理栄養士による営業支援を遠隔化するカゴメも「所属する栄養士は9割が女性。育児中でも空いた時間に仕事ができる。地方への営業に出向く必要もない」としている。
 ノジマは商品や接客知識にたけた最長80歳までの高齢社員について、在宅勤務による遠隔販売員としての活用を検討する。通勤や店舗での作業が負担となる人でも、働き続ける道が開ける。
 みずほ総合研究所によれば、就職を希望しているが育児や介護を理由に求職活動していない人は国内に100万人以上いる。2014年の内閣府調査では、労働力率が3割の60歳以上の高齢者でも、全体の3割が「生涯現役」を希望した。少子高齢化で日本は労働力の不足に直面している。パーソル総合研究所(東京・千代田)は、30年時点で労働需要が供給を644万人上回ると予測する。
 課題はデジタル時代を想定しない古い法律だ。不動産では、宅地建物取引業法で契約内容などの重要事項について対面説明を義務付けている。マンション販売をすべて遠隔対応にするには法改正などが必要だ。

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