車も家も「行かずに買える」、三菱地所系、VRで内見(withコロナ企業の現場)


【withコロナ 世の中の変化】
 「この車がジャガーでは一番コンパクトなSUV(多目的スポーツ車)です」。7月、東京都江東区にある英ジャガー・ランドローバーの販売店「東京ベイ有明」。タブレット端末越しにビデオ通話で顧客に車を説明する販売員、山荘馨さんの姿があった。ドアを開けて車内を見せ、四輪駆動の走りの快適さなども丹念に紹介した。
 日本自動車輸入組合によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で5月の国内輸入車販売台数は前年同月比でほぼ半減した。来店での商談が当たり前だった自動車販売の現場も変化を迫られている。
 販売店運営のジャガー東京(東京・世田谷)は6月、商談から納車までオンラインで完結できる販売システムを導入した。商談にはビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使う。どうしても必要な書類は郵送でやりとりする。
 このシステムを利用した横浜市在住の男性会社員(27)。子供が昨年生まれたばかりだ。「人との接触を避けて移動したい」と感じ、4月ごろから購入を検討し始めた。「ネットで事前にいろいろ調べていたので、オンラインでのやりとりでも特に不便は感じない」

【最初の窓口でのオンライン商談は意外とうまく行く】
 ジャガー東京ではオンライン商談を2017年から一部導入した。だが新型コロナをきっかけに営業のあり方を見直し、オンラインで完結する方式も採用した。最終的に一度は来店する客も多いというが、「最初の窓口としてのオンライン商談の効果は予想以上に大きい」(東京ベイ有明の新堂正実支店長)と手応えを感じている。
 一方、自動車販売では販売員の人柄や接客態度が購入の決め手になることも少なくない。オンラインではこうした伝統的な手法が伝わりにくい。横浜市の男性会社員も「店の人とは長い付き合いになるので全く会わないとちょっと心配かも」と語る。ネットを活用しつつ、いかに客との距離を縮められるかが課題だ。
 車と並び、高額消費の代表格であるマンション販売でもオンライン活用が進む。三菱地所レジデンスは5月下旬、新築分譲マンションのオンライン接客を全国の物件に広げた。対面よりもオンラインを希望する客が増えたためだ。
 東京都港区にある「高輪ゲートウェイマンションギャラリー」。担当員の斎藤真輝さんはパソコンの画面上で、顧客と仮想現実(VR)のモデルルームなどを一緒に見ながら商談を進めている。
【オンラインでも対面営業でも成約率は同じ】
 同社のオンライン接客の実績は10日時点で、全国40物件で累計413件。商談全体の5%程度を占める。港区在住の30代の男性会社員は「子供が小さく夫婦ともに忙しいため、まずはオンラインで相談した」と語る。成約に至った割合はモデルルームでの対面営業とほぼ同じという。
 顧客の来場負担の軽減や、接客時間の短縮など効率化につながっている面もある。「今後もオンラインと対面の両方を組み合わせ、『新常態』として定着させたい」(三菱地所レジデンス)
 だが、オンラインならではの悩みもある。自分の顔を画面に映したくない客もいて「反応を読み取るのに苦労することもある」と斎藤さん。新常態の販売のあり方はなお試行錯誤だ。(随時掲載)

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