きけん! 感染症リスク!温暖化で増大、凍土から炭疽菌、デング熱、蚊の生息域拡大、COP延期、「関心薄れる」危惧。


【地球温暖化による、コロナ以外の感染リスク】
 地球温暖化により感染症の拡大リスクが増している。北極圏の凍土が溶けて閉じ込められていた細菌が人に感染したり、ウイルスを媒介する蚊が生息する地域を広げたりしている。感染症がいつ世界的な流行(パンデミック)を起こすかは見通せない。新型コロナウイルスのような事態の発生が危惧される。 
【炭素菌が凍土の溶解により広がる恐れあり】
 ロシアの北極圏の都市ノリリスクで5月、ディーゼル燃料の流出事故が発生した。温暖化の影響で永久凍土が溶解して地盤が緩くなり、燃料タンクが破損したとみられている。凍土の溶解によって感染症が広がる恐れが増すと懸念されている。
 実際に2016年にはシベリア西部で住民が炭疽(たんそ)菌に集団感染し、軍まで出動する事態が起きた。炭疽菌を持つトナカイの死骸が永久凍土から姿を現し、他の動物に感染したのが原因と考えられる。
 シベリアでは今年6月も最高気温がセ氏30度を超える日が記録されている。ロシアの研究者は「気候変動により人獣共通感染症のリスクが高まっている」と話す。フランスの研究チームはシベリアの凍土から新種のウイルスを発見した。炭疽菌以外の病原体が露出する危険性も増している。

【海水温の上昇でこれらを引き起こす可能性もある】
 温暖化の影響とみられる感染症の拡大は他でも起きている。下痢などを引き起こすコレラは、海水温の上昇でまん延するとの報告がある。南米では海水温が例年より高いエルニーニョ現象の発生時にコレラが流行するという。気候変動で頻発するようになった洪水もコレラの感染者を増やす。
【デング熱は、蚊によって媒介される】
 蚊が媒介するデング熱は主に熱帯や亜熱帯地域の病気だが、14年には日本でも多数の感染例が報告された。ウイルスを媒介可能な蚊は日本にもおり、気温上昇に伴って生息域が北上している。世界保健機関(WHO)によると、重症型のデング熱の流行地域は100カ国以上と、世界的な広がりをみせている。
 こうした事態を受け英医学誌ランセットは19年11月の報告書で「温暖化ガス削減などの対策なしでは健康が確実に害される。特に子供が影響を受ける」と警鐘を鳴らした。温暖化による気温上昇や降雨量の増加などでウイルスや細菌が広がりやすい環境になり、デング熱やコレラなどに感染しやすくなっているという。
 コウモリが起源と考えられる新型コロナと同様に、コウモリを宿主とする別の病原体も人を脅かしている。1998~99年にマレーシアで広がったニパウイルスだ。脳炎などで100人以上が死亡した。
 果物を食べるオオコウモリの生息地に人が進出し養豚場を作った結果、ニパウイルスがコウモリからブタに感染し、さらに人にうつった。森林を伐採したり温暖化で火災が起きたりしたことも影響したとの指摘がある。
 コロナ禍の影響で、20年11月に英国で開く予定だった第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は1年延期となった。環境政策に詳しい東京大学の高村ゆかり教授は「気候変動への関心が薄れている。自然とつながる気候変動のリスクは感染症の問題でもある」と危惧する。
 自然災害が多い日本では、感染症の流行が避難計画などにも影響を与える。国民の健康にとっても死活問題だ。COPは延期されたが、温暖化対策の手綱を緩めてはいけない。

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