【抱腹絶倒】これがゴレンジャーの正体だ!
ぼくはあんまり旅行しないほうだけど、ここ15年くらい年に1回~2回泊っている、旅館のようなホテルのようなところがある。
そこが、震災の翌年だったかにリニューアルオープンしたことがあった。
リニューアル前の朝食はビュッフェスタイルで、好きなものを好きなだけ取ってガッツリ食べるという僕好みのものだった。大盛ごはんにスクランブルエッグと焼きそばにカレーをかけて、みそ汁とオレンジジュース・・みたいな好き放題な食べ方をしていた。
しかし、リニューアルオープンしてからは個別の仕切りの中で「上品な日本の朝ごはん」をいただくスタイルになった。ご飯は、目の前の小さなお釜でたかれており、上等そうなアジの干物などがついている。おいしいことはおいしいのだが、スクランブルエッグと焼きそばにカレーみたいな下品な食べ方はできない
あれからすでに10年がたち、日本の朝ごはんもすっかり慣れて好きになったけど、リニューアル当初はそうでもなかった。
おいしいですよ~!
はじめて「上品な日本の朝ごはん」をいただいたときのことだ。スタッフが朝食の席に案内してくれつつ、「リニューアルしてビュッフェはなくなり、これこれ、こうなっております」みたいな説明をしてくれたのである。
とぼくは応えたのだが内心「アジの干物かよ」と幻滅していた。そんな僕に向かってスタッフが一言
と添えたのだ。もともと飲みすぎと睡眠不足で食欲はなかったのだが、そういわれて、なおさらげんなりし、あまりおいしくいただくことはできなかった。
記憶に残る一言
なんだかしらないけど記憶に残っている一言ってある。しばらく前の記事でも「もう、痛いだけよ!」というのを紹介したけど、あれは40年くらい耳に残っている。
そして、この「おいしいですよ~!」も10年耳に残っており、以後、あの朝ごはんを食べるたびに思い出す。
スタッフに悪気はなかったであろう。
おいしいに決まっているので、つい「おいしいですよ~!」と言ってしまっただけなのだろう・・が、ふつうラーメン屋の店主が、客にどんぶりを出しながら
とは言わない。それは客が判断することなのだから。
翌年も、その翌年も同じスタッフに案内されたのだが二度と「おいしいですよ~!」とは言われなかったので、リニューアル当初は、気張っていたのがつい出てしまったのだろう。今となってはいい思い出だ。
『怪奇 アッシャー家の惨劇』
なぜこの「おいしいですよ」を急に思い出したかいうと昨日、アマゾンプライムビデオで
という映画を見たからである。原題は『アッシャー家の崩壊』で、エドガー・アラン・ポーの同名小説の映画化だ。
というのは、日本の配給会社がつけたのだろう。怖いかどうかは観客が見て決めることなので、前もってタイトルで
と説明する必要はないのだが、この「怪奇」が「おいしいですよ」みたいに感じられる。文句を言っているのではなくて、「B級ホラーな感じがしてなんだかいいなあ」と思うわけである。もしこれが
だったら全然違う感じにになるのだが、高級なものはこういうことはしない。
こないだ『ロブスター』という映画を紹介したけど、あれが単なる『ロブスター』なのは、送り手側の自信と高級感ゆえだと思う。
だったら、B級ホラーになってしまう。そしてYouTubeにはいまでも、この手のB級っぽい説明であふれている。
【抱腹絶倒】・・・
【神回】・・・
【感動】・・・
などなど。
抱腹絶倒するか、それとも感動するかは、ぼくが見て判断することなのだが、あらかじめ
と説明してくれている。思えば日本のタイトルってこういうのが多い。
などなど。なんかつけないと収まりがつかないのだろうか。ためしに戦隊シリーズをしらべてみると
からはじまって
と続き、2023年の
までずーっと「こういうの」がついている。専門用語で何と呼ぶのか知らないのだが、サブタイトルではなくて前に来るのである。アメリカのタイトルで見かけたことがないのでお国柄なのだろうか。
元祖は「科学忍者隊 ガッチャマン」あたりにありそうな気がするけど、さらにさかのぼれば屋号がそれに近い気がする。歌舞伎では
などと掛け声をかけるらしいが、「秘密戦隊」や「超時空要塞」そして「抱腹絶倒」などのルーツはあんがい成田屋なのかもしれない。
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