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なぜ作り話が好きなのか?

2020年を中心に「不要不急」ということばが流行った。不要不急とは「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」(広辞苑)という意味だそうだ。

当時は、演劇やコンサートなどの集まりが「不要不急」とされて軒並み中止された。当然、俳優やミュージシャンは仕事を失ったわけだが、同時に、

自分たちのやってきたことは不要なことだったのか

という疑問にとらわれた人たちも多かったと聞く。

ぼく自身は、コロナ禍でそういう疑問にとらわれる立場ではなかったのだが、外国で戦争が始まってから、別な意味で似たような疑問にとらわれるようになった。

作り話依存症

ぼくは映画や小説が好きである。単に好きというより、そういったものをたえず摂取していないと

禁断症状に苦しむ

というくらいなので、依存症といってもいい
劇映画や小説をまとめてフィクション(作り話)と呼ぶならば、ぼくは「フィクション依存症」だといえる。

いまは、Amazonプライムビデオで、フリッツ・ラングの作品群をまとめて見ている。フリッツ・ラングとは、1930~50年代にスパイ映画をたくさん作った人だ。

また、創元推理文庫の『ポオ小説全集』というのを読みふけっている。奥付に「1987年第30版」と記載されているので、高校時代に買ったものだろう。それを実家で見つけて、読みふけっている。

必要緊急の話題

しかし、いま世間は戦争の話題でもちきりだ。そして、戦争についての情報を得たり、戦争について考えたり、戦争についての意見を発信することは、1社会人として、どちらかといえば、必要緊急のことに属する。

しかし、ぼくはその必要緊急が苦痛である。いま目の前に戦争についての本と「ポオ小説全集」があった場合、ぼくの手はどうしても後者に伸びる。

NHKスペシャルでウクライナ番組を見るか、それともプライムビデオでフリッツ・ラングのスパイ映画を見るか、どちらかを選べといわれれば、後者をクリックしてしまう。

そして、そういう自分にやや罪悪感を覚えるとともに「なぜこれほど作り話を求めるのだろう?」ということを考えないではいられない。

作り話を求めない人もいる

こんなことを思ってしまうのは、いまぼくの周りには、フィクションなどは欲しいとも思わず、戦争やら世界情勢について考察することを「楽しい」とかんじているような人が多くいるからだ。そういう人たちを見ていると、

なぜ自分は作り話ばかりを求め、彼らのように戦争や世界のことに興味を持てないのか?

と考えないではいられない。この文章を書き始めたのは深夜の2時過ぎだが、23時あたりからずっとそのことを考えていた。「なぜ、自分はウクライナ情勢を放り出して、ポオ小説全集などを読んでいるのだろうか?」と。

いくら考えもはっきりしたことはわからないが、。ただしぼんやりと「そうかもしれない」と思えることはいくつかわかった。

フィクションは現実逃避である

まず、ぼくがフィクションを好むのは、現実逃避に近いということだ。

そして、なぜ現実逃避するのかというと、現実の解釈をめぐって、言い争ったり相手をやりこめたりするのがイヤだからだ。

そのうえで、なぜフリッツ・ラングの古い映画や、高校時代に買った「ポオ小説全集」を選ぶのかというと、流行りのものに手を伸ばせば、その解釈をめぐって言い争ったり、相手をやりこめたりすることにまきこまれやすいからである。

その意味で、ぼくは社会から2重に逃避しているといえる。

まず、リアルワールドから作り話に逃げているという意味で現実逃避しているが、そのうえで、あえて古臭いフィクションに逃げることで、流行りのフィクションをめぐる世間の争いからも身を引いている。

戦いは苦手ではない

しかし、戦うのが下手かというとそうでもないのだ。プロボクシングやプロ野球の戦いを見るのは好きだし、ビデオゲームで戦うのも好きだし、1プレイヤーとして金融市場に加わることも好きである。

しかも、議論もヘ理屈もわりに得意なので、

言論で戦え

と命令されたら、そこそこやれる気はする。ただし、やりたいかと言われればやりたくない。人をへこませても気分が悪くなるだけのでやりたくない。

SNSの言論を眺めていると、その大半が自己顕示欲のぶつかり合いに見えるが、ぼくには、他人をへこませてまで自分をアピールしたいという欲求がないので、そういう争いに加わりたくない。

ウケることは好き

ではなぜこんなnoteなど書いているのかというと、ひょんなことから書き始めて、やめる踏ん切りがつかないので書き続けているのである。自分をアピールしたいとは思っていない。

とはいえ、ウケることはかなり好きなので、読んだ人の考えのヒントにでもなれば、うれしいことだ。この「ウケたい」という色気が、自己顕示欲なのかどうか、よくわからない。

「ウケたいけど争いたくはない」 のでせっせとどうでもいいことを書いている。

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