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意地を張らずに買っておけばよかった。

美術館に行くのがわりにスキなんだけど、今年は一度も行ってない。理由はアレのせいですアレ。アレという以上に書くと、この記事の上に「1次情報を確認してください」と警告がでててしまうのでアレとしか書けない。ただし、今日はアレについて語りたいわけではなくて、ルーベンスの図録について語りたい。

上野に『ルーベンス展- バロックの誕生』を見に行ったのは、18年の暮れだった気がするのでずいぶん前だ。

美術展では、図録というものが売られている。その展覧会特製の画集だ。展示されている作品を中心に掲載され、装丁もりっぱで、紙質も印刷もよく、解説もくわしいわりには低価格だ。非常にお買い得である。館内の売店で売られており、観覧を終えた後でしか買えない。ちなみに売店には、図録のほかに絵はがきや、作品をあしらったクリアケース、作品のレプリカ、さらには作品にちなんだタオルやフィギア、クッキーまで売っている場合もあり、観光地の土産物屋さながらの雰囲気がある。

「せっかく来たんだから」」ということで絵はがきや、図録や、クリアケースをどんどん買い求める人が目立つ。ただ、ぼくは作品を鑑賞しおえたあと、しばし余韻にひたりたい。土産物屋のあわただしさに巻き込まれるのはやや苦手である。なので、ショップは足早に通り過ぎることにしている。

クッキーやフィギュアはともかく、図録も買わない。これはちょっと行きすぎたストイシズム(禁欲主義)である。「作品との出会いは一期一会。目の前に立った瞬間が勝負だ。なまじ図録で見なおすことができると考えていると、集中して絵を見ることができない・・・」などとしゃらくさいことを考えていた。

いまでも基本的にはそう考えている。近代画家ならば、それでOKかもしれない。しかし、ルーベンス展にいったときはさすがに「図録を買っておけばよかったな~」と後悔した。絵は時代をさかのぼるにつれて画家の自己表現といったものからは遠ざかっていき、宗教や時代の文脈に照らさなければうまく理解できなくなる。目の前に立ったときの「直感」などというものはあてにならない。

ルーベンスはバロック期の作家で、聖書からの引用や寓意がいたるところにちりばめられている。しかも大作が多く、たくさんの弟子を使って描かれている。圧倒的な情報量だ。絵のまえに5分や10分立っているだけで「直感的に」理解するなどということは不可能だ。

「買っておけばよかった…」という気持ちが1年以上たってもおさまらないので、結局、ひと月ほど前にヤフオクで落札してしまった。つまらない意地を張らずに展覧会場で買っておけばよかったと思う。

内容は素晴らしい。買ってよかった。毎晩、寝る前にながめているだけで何ともいえないゆたかな気分になってくるのは、実物をみた記憶とかさなるからだろう。

ただし、これでみどころを予習してから展覧会に行けっていればもっと感動できはずだ。しかし、図録は絵を見終えた後でないと手に入らないのである。前売り券とこみで図録を(やや割引でw)売ってくれないかなあ。。。

とはいえ、まずはアレを気にせずに美術館に足を運べるようにな日がはやくきてほしい。そっちが先である。

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