これまで暮らした土地で嫌いになった土地はない
ぼくは瀬戸内の出身だ。
教員をやっていたころ、同僚だった文化人類学の専門家からこう言われたことがある。
「きみは性格にナギがあるね~
広島出身の○○さんとおなじだな。
きみら瀬戸内の人間は性格にナギがあるよ~」
文化人類学者っておもしろいな~。人をそういう風 に見るんだな、と思ったんだけど、つまりは風土と性格をつなげて考えているわけである。ちなみにかれ自身は江戸っ子で、アイヌの研究家だ。
彼の分析は、あるていど当たっているような気がする。
あまりステレオタイプ化してしまうのもよくないんだけど、南国の人と雪国の人とでは、かなり雰囲気がちがうことが多い。
地球上のどこで育ったとしても、その風土は知らず知らずにその人の性格に大きな影響を与えているのではないだろうか。
瀬戸内と言えば、べたなぎとみかん山だ。
風がそよともせず、海面が鏡のようになるわずかな時間が、朝と夕方におとずれる。そういうものをみて育っていると、ナギのある性格になるのかもしれない。
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ただし、僕自身は故郷に対するこだわりと言うのはあまりない。もちろん、愛着はある。でも、住めば都はどこでも同じだ。
ぼくにかぎらずあのあたりの出身者人は、生まれた土地への思い入れがわりに淡泊なような気がする。激しく嫌うこともないし、わざわざ語るほどの偏愛もない。
平和な気分でほどほどに満足している。ナギである(笑)。
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最近、SNSで北の方の人とのつながりが増えた。かれらの投稿を読んでいると、生まれた土地に対する愛憎を感じることがある。ものすごくスキで、そして嫌いな面もあるという風に見える。
そのあたりの肌感覚のちがいが感じられるのが、ハナシをしていて面白い。
とはいえ全員日本人なんだけど(笑)欧米人から見たら、韓国人と中国人と見分けがつかないんだけど(笑)。ぼくだって、スウェーデン人とデンマーク人の区別はつかないのでお互いさまだ。
というわけで、大雑把に言えば人類みな一緒。
でも細分化すれば限りがない。
となりの高校との校風の違いが元でケンカになったりもする。
アメリカで3年暮らした土地のことが、最初ははあれほどイヤだったのに、今ではみょーに懐かしいのが、不思議だ。
これまで暮らした土地で、嫌いになった土地はない。みんな気にっている。
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