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アメリカがやっちまった...

どの国や文化にも、社会を安定させるための人々の心の支えというか、象徴のような場所がある。

日本人にとって富士山は、山という以上の存在だ。伊勢神宮もしかり。近所の山や神社だってだいじだけど、同じには扱えない。

アメリカ人にとっての連邦議会もそうだったらしい。

今日ツイッターでとりあげたNPRラジオ番組のキャスターは、初めて議事堂ツアーに参加したときの思い出を語っている。階段の焼け焦げを見物したのだそうだ。1812年の米英戦争の弾着の跡である。議事堂とはそういうものが見学対象になる場所だった。1812年以降、議事堂で戦闘が行われたことはない。

アメリカ人にとっての連邦議会は、日本人にとっての天皇制みたいなものといってもいいのかもしれない。社会システムを安定させるためのヘソのような役割である。

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ところで、ネットでは「群集がなぜかんたんに議事堂に入れたのか」という疑問が呈されているが、それへの答えを今日、国際情勢アナリストの某氏から聞くことができた。上記の考え方と符合している。

つまり議事堂とはアメリカ国民の議論の象徴の場であり、すべての国民に入る権利のある場所だった。だから、警備はつねに手薄にしていたそうだ。

正面から押し掛けた群衆を、警備員が食い止められなかったのはそのためだという。

アメリカ人は自分の敷地に他人が踏み込むことを異様に恐れるタイプの人々だ。そういうアメリカ人が議事堂をほぼ丸腰にしていたということ自体、そこが汚すべからざる場所だったことを逆説的に示している。

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今回の議会乱入事件にはかなり心を痛めている人が多い。被害の大きさならポートランドの方がよほど上なのだが、神聖な場所が汚されるのは「ウラであくどいことをやっているくせに」というのは別次元の話なのだろう。

日本の場合だと山本太郎さんが陛下に手紙を渡そうとして辞職騒ぎに発展したことがあるけど、あれに近いデリケートさがあるのではないか。

太郎さんに悪気はなかっただろうが、モリカケとはちがう次元で「やっちまった」。議事堂をけがした人たちもアクドイ人たちではなかっただろうが、「やっちまった」のである。

あるジャーナリストは下手をすれば911レベルの騒ぎになっていたというが、すでにそれに近い感じもする。

911後、アメリカは全体主義的にイラク戦争へ向かってしまった。そして、現在も、あれほど対立していた民主・共和両党が一体となって極右の弾圧に向かっている。

あっという間にトランプのアカウントは永久停止され、パーラーアプリはGoogleからもAppleからも入手できなくなった。

まさかこういう形でトランプ大統領が「詰む」とは思わなかったが、トランプが詰んでも、自動小銃を装備した多数の民兵が野放しで残っている。

今後、トランプは訴訟に追われ、公の場に姿を現すことが減るかもしれない。そうなれば、岩盤支持層は孤立し、憤りを深めていくだろう。

日本にとってのアメリカは、のび太にとってのジャイアンである。ジャイアンが元気を回復すれば、やがて日本はカツアゲをくらうはずだった。そういう関係が70年以上続いてきたのである。どうやら米の景気は回復しそうだし、カツアゲされる可能性はまだ残っている。

だが、万一、アメリカが極東どころではなくなった場合、こんどは中国がジャイアンになるかもしれない。そういう可能性がやや現実味を帯びてきた。

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