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プレイステーションなんてよく続いているほう

昨年の秋くらいからTBSの『報道1930』という番組をだいたい欠かさず見ている。リベラルな意見がバランスよくわかりやすくまとめられており、いつも勉強になる。

1月11日の放送がこんなのだった。

ソニーとトヨタがEVに参入するそうだ。自動車産業はこの国に残された数少ないお家芸の1つであり、実績のあるメーカーがあいついで本格的に参入するということで歓迎ムードな番組だった。

ゲスト解説者によると、ソニーが参入したのが「意外だ」という声が多いが「まったく意外じゃない」そうである。この人は元ソニー社員の経営学の先生である。

そもそも創業時に炊飯器を作ろうとして、失敗してラジオを作ったメーカーですからなんのおどろきもありません

なのだそうだ。もともとポリシーのない何でもありな社風でEVもぜんぜんありだという。

ちなみにぼくは元社員でもなんでもないけど、ソニーについてはそれなりにわかっているつもりなので、他の人があえて言わないことを書いてちょっと水を差してみたい。

ぼくがソニーを理解しているのはオーディオを通じてである。90年代にオーディオという趣味の沼にはまっていたんだけど、あれはクルマやカメラなどにちかいものがある。

クルマにはお国柄や各メーカーのふんいきが出る。乗り心地やデザインやエンジンの響きなど五感を通じて理屈抜きに伝わってくる。

オーディオも同じで、じぶんの好きな曲がどういう味付けで聞こえてくるかによって、各メーカーのとくちょうが理屈ぬきにつかめてしまう。

つまらない沼にハマったことをあとあと後悔していたんだけど、これだけテクノロジーへの依存度の強い世の中になってみると、わかいうちに理屈抜きにテクノロジーを感じていたのはよかった。結果オーライだ。

さて、ぼくの感じるソニーの特徴とはズバリ「長続きしないメーカー」である。スピーカーがわかりやすい。

イタリア製は工芸品のようでボーカルが美しく鳴る。イギリスのスピーカーは趣味がよくてやや小骨が多い感じ。アメリカのスピーカーはアメ車のように豪快で、日本のスピーカーは生真面目で定規で測ったような音を出す。

もともと日本のスピーカーのルックスはこういう感じだった。

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左からオンキョー、ダイアトーン、ケンウッド。右側のやつはいまぼくの目の前50cmのところにあり、90年代からずーっと愛用している。3つのユニットがタテに配置されて広い周波数帯域をカバーし、正確無比な音を出す。バブル期まではこれこそ「ザ・ジャパニーズ・スピーカー」だった。他の国にこういうルックスのスピーカーはない。

ソニーもかつてはイイ感じのジャパニーズ・スピーカーを作っていた時期もある。

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しかし、バブル後にイギリスのスピーカーがブームになったことがある。ブリティッシュサウンドの代表としてはロジャーズなどがあげられるが、こんなルックスである。

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明るい木目調のデザインにユニットは2つ。帯域は狭いが物理特性よりも音楽のあじわいを重視する。インテリアとしてもいい感じ。そしたらソニーがすかさずこれを出してきたのである。

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評論家の人たちが感心しながら「やっぱりソニーだな。伝統がない」などと感心していたのをおぼえている。似たようなことはパソコンでもあった。

NECのLAVIE、東芝のダイナブック、Panasonicのレッツノートなど、日本メーカーはいまでも健闘しているけど、Windowsノートで一番おしゃれだったのはなんといってもソニーのVAIOである。しかし、さっさと身売りして今のVAIOは台湾製だ。

だれも言わないというか言えないのかもしれないけど、ソニーはおしゃれなVAIOでマックに対抗したように、かっこいいデザインでテスラに対抗して話題を振りまきつつ、わりあいすばやく消えていくのではないか。20年後に残っている気がしない。

プレイステーションなんてよく続いているほうだ。

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