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ミシガンの森の中にいるといわれる謎の生物「ドッグマン」

たとえば、Amazonプライムビデオで

"タイタニック"

を検索すると、ディカプリオの『タイタニック』だけでなく、

タイタニック2012

とか

SOSタイタニック/忘れえぬ夜

などといった、まぎらわしい映画も一緒にヒットする。この手の紛らわしいタイトルはとりわけホラー映画に多い。

80年代に『死霊のはらわた』という作品がヒットしたけど、そうすると、

死霊のえじき
死霊の棲む家
死霊船 メアリー号の呪い
死霊の盆踊り
死霊館

など、「死霊っぽい」タイトルが芋づる式に出現するのが習わしである。これは悪いことではなくて、ホラー映画ファンはこういうのもふくめて、ホラー映画を楽しむのが正しい作法だといえる。

「クローバーフィールド」と「クローンフィールド」

なので、ビデオレンタルがさかんだったころは、うっかりするとパチモンをつかまされることも多かった。

かつて『クローバーフィールド/HAKAISHA』という映画が流行ったころ、ぼくはDVDレンタルでこの映画を借りてかえったつもりで、再生してみたところ、どうもおかしい・・。

『クローバーフィールド』はニューヨークを舞台にしたドキュメンタリータッチの怪獣映画のはずなのだが、ぼくの見た映画は、ド田舎の研究所から始まっていた。そこでもう1回タイトルを確認すると

『クローフィールド HAKAISHI

となっており、HAKAISHAではなくHAKAISHIだったことがある。このように同じ棚で真横にならんでいるので、ちゃんと確認しないで手に取るとだまされることはよくあった。

まちがって『クローンフィールド HAKAISHI』を借りてしまった人は、当時、全国で続出していたことだろう。

まちがえないほうがおかしい・・

なあに恥ずかしがる必要はないのだ。この比較画像を見ても明らかだが、色味といい、フォントといい、摩天楼と雲の感じといい、明らかに確信犯であり

間違えないほうがおかしい

というレベルだ。発売元としてもウケ狙いの面はあったはずなので、

あはは、やられたなあ・・

と思って「クローンフィールド」との出会いを楽しめばいい。実際、「クローンフィールド」は悪い映画ではなく、アマゾンのレビュー欄でも「この手のパクリタイトルの中では良作」と評されているので、まちがって借りた人はラッキーだったともいえる。

「ドッグマン」と「ザ・ドッグマン」

『ドッグマン』というと、カンヌで賞を取ったイタリア・フランス合作の犯罪映画で、知っている人も多いと思う。

一方、『ザ・ドッグマン』はアメリカのC級ホラー映画で、知っている人はほとんどいない。ただし、今回はまちがって見たのではなく、概要欄に惹きつけられて見た。

二足歩行で爪に細菌を付着させたドッグマン!巨大な犬が人間たちに襲いかかる、脅威のモンスター・パニック・スリラー!

と書いてあるのが気になって見ずにはいられなかった。

犬が二足歩行したら怖いのだろうか・・
爪に細菌を付着させていると怖いのだろうか・・

などと妄想がふくらんでしまうのだが、出来栄えはこの写真でだいたい伝わる。

ほとんどゆるキャラ

CG全盛のいまどき、完全着ぐるみでやっているのがすばらしい。

賛辞のかずかず

日本語のレビューは皆無にひとしいのだが、3つだけ見つかる。そのうちの1つには

ドッグマンがゆるキャラにしか見えない。

と書かれているが、同感である。もう1つはアメブロの記事で、

残念な部分は目立つけど、良い&面白い点はあるから駄作とは言い切れないと思います。

とあるが、ぼくも賛成だ。さらにもう1つはmixiのホラー映画コミュニティの投稿で

思った通りの着ぐるみワンコなんですが、思ったより良く出来ていて楽しめました。ハンターの夫婦の奥さんがコミカルでほんわか感出てるし、ドッグマンが可愛い(笑)

という意見で、これも同感だ。まがりなりにも「脅威のモンスター・パニック・スリラー」なのだから、1か所くらい怖いところがあってもいいはずだが、いっさい怖いシーンがなかった。

このナゾのほんわか感は、撮影現場の雰囲気からきているのではないだろうか。エンドロールにNG集がついており、逃げる警官を追うドッグマンがコケて、スタッフが爆笑しているシーンが入っていたけど、スタッフ&キャストがいい人たちばかりで、たのしみながら作ったのだろうと感じさせられる。

愛すべき珍映画

ぼくの感想は、やや上からになってしまうけど、

ちゃんと完成させているのがエラいな・・

というものだ。出来上がった作品をバカにするのは簡単だが、作るほうは予算集めから公開までさぞ大変だったろうに、よくがんばったなあ・・と。総じて「愛すべき珍映画」だと思う。

ドッグマン・ゼロ

ちなみに上の3人とも指摘しているが、この映画の原題は

DOGMAN 2

であり、前作「DOGMAN」が存在する。

この1作目もアマゾンプライムで配信されており、字幕はついていないけど英語でよければ見ることができる。3人目の人も見たそうだが、僕も見た。見たいと思わせる何かがあるのだ。

セットはなく、オールロケーションなんだけど、ミシガン州の森林がふんだんに映っており、全体に中西部の田舎町の雰囲気がストレートに映っていて好感が持てる。

ちなみにドッグマン(犬人間)というのは「ミシガンのドッグマン」というナゾの生き物なのだそうで数々の目撃者がいる。日本でいうとヒバゴンみたいなものなのだろう。

1作目はドキュメンタリータッチで、最後までドッグマンははっきりとは映らない。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」とか「パラノーマル・アクティビティ」とかそれこそ「クローバーフィールド」などに連なる感じを狙ったのだろうが

イイ感じにコケて、ほのぼのしている

ところが見どころだ。

アメリカ人にとっての森

アメリカには森林にまつわる民間伝承が多い。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」もそうだったが、「13日の金曜日」のジェイソンも森の中をさまよっているという設定だった。

それだけ森林が多いということでもあり、ぼくが住んでいた町にも、森の中で少女が行方不明になったといううわさ話があった。きっとアメリカ中に似たような話があるのだろう。

アメリカ人の庶民にとっての森は、人知を超えた力の象徴であり、「ミシガンのドッグマン」もそういう存在なのだと感じさせられる。「ザ・ドッグマン」も、もう1回は見ると思います。

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