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同調圧力だって毒にも薬にもなるはず

16世紀スイスの錬金術師パラケルサスは「すべてのものは毒であり、その毒性は量で決まる」といったそうである。

水だって無害というわけではなく、飲みすぎると水中毒を起こして最悪のばあいは死に至る。マラソン選手がまれにかかることがあるらしい。

人の性格もおなじだ。用心深いのはいいことだが用心深すぎると疑心暗鬼におちいるし、楽観的なのもいいことだが、楽観的すぎれば備えがおろそかになる。バランスしだいで長所は短所に、短所は長所に転じる。

ここ数十年、日本は経済がふるっていない。その前があまりに好調だっただけに落ち込みの激しさが際立つわけだけど、それにしても、いまの日本には社会の欠点を批判する声が多すぎる。とりわけ悪者扱いされるのは同調圧力だ。しかし、日本だけが万物の法則から外れているわけではないので、いかなる欠点もバランスを変えれば長所になるはずである。

ぼくがアメリカに留学していたのはもう17~18年まえのことだが、会う人会う人に「日本車はすばらしい」といわれた。白人からも黒人からもインド人からもイスラムの留学生からも言われた。社交辞令もあったかもしれないし、そもそもぼくが自動車産業にたずさわっているわけではないので、いくら日本車をほめられてもぼくの手柄にはならない。

それにしても、かれらの言わんとすることはよーくわかるのである。日本車がいいというのは、「きわめつけに故障が少ない」ということだ。これはすごいことなのだが、そのありがたみに一番気づいていないのは日本人だろう。日本にはきびしい車検制度があるので、ある程度の年数を乗ると新車に買い替えたほうが得ということになる。だから、壊れるまで乗るということが少ない。うちの近所で見かけるクルマはどれもピカピカだ。

その点、アメリカやその他の国の庶民は、壊れるまで乗ることがおおい。それでも壊れないのが日本車なのである。

ぼくは留学中にクルマを持っていないころ、よくインド人の友人に乗せてもらっていた。かれはトヨタ車に乗っていたんだけど、ハンドルを握りながら「日本車はいい。オイル交換さえしてやれば永遠に走ってくれる。おれの唯一の財産だ」としみじみ語っていた。

5年ほど前のアメリカのネットに「フォードを買うべきかトヨタを買うべきか」という記事があり、フォードのほうが関税がかからないので一見安く感じるが、長期的には修理費がかさんで損なのでトヨタを買ったほうがいいと書かれていた。

クルマの魅力は故障率だけではない。しかし、壊れないという点について、世界でこれほどの信頼性を得ていることはすごいことなんじゃないだろうか。後にも先にもそれほど壊れない工業製品を作った国はない。

もちろんこれほどの品質管理は、きわめつけの同調圧力に支えられてのことだろう。しかし、同調圧力だって毒にも薬にもなるはずで、それが薬として働いたときに「壊れないクルマ」という世界に誇る結果が生まれた。過去の栄光だとしても、すなおに誇っていいんじゃないかな~。これからだって、日本人の国民性を薬にできるチャンスはいくらでもあると思う。

ちなみにこの記事「フォード20秒、プジョー47秒でアウト、ホンダは壊れる気配なし」・・・"壊れる気配なし"ってすごいことだと思うんですけど。


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