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常連客が店をつぶす

入りにくい喫茶店

先週の月曜日に鎌倉見物に行った。

鶴岡八幡宮を中心と考えると、おおくの名刹はその北側か西側に位置している。西には長谷の大仏があり、北には建長寺、明月院、そして夏目漱石の『門』で描かれた円覚寺などがある。

しかし今回めぐったのは、おもに東側のほうで、それほど有名な寺社仏閣はなくて、どちらかといえば市民の日常生活が広がっている地域である。鎌倉に毎年足を運ぶようになってもう17年目なんだけど、最近は有名な観光スポットよりもあまり人のいない東側を好んで歩くことが増えた。

そうして半日歩きまわっているとやや疲れてきたので、妻と「ちょっと喫茶店にでも入って休もうか」という話になったのだが、歩いても歩いても喫茶店がない。

市の中心部は、どこもかしこも喫茶店だらけなのだが、ちょっと東に足を伸ばすと軽く休めるような喫茶店が見当たらない。コロナで廃業したり、月曜日だったので「本日休業」だったりして一休みする場所がなく、結局バスで中心部まで戻って有名なパンケーキ屋さんに入ったのである。

ここに入りました↓「しあわせのパンケーキ」

たいがいのガイドブックに載っている有名店で、実は午前中にも入ろうとしたけど行列で入れなかったのだ。午後にバスで戻ってみると入れたわけだから、まあ運がよかったといえる。さらに、今年で閉店するそうなので、食べてみたい人はなるべく早めに行っておきましょう。

それはともかく、じつは町の東側にもまったく何もなかったわけではなくて1軒だけ喫茶店らしき店があったのだが、雰囲気がイマイチだったので入るのをやめた。

常連が営業を妨害していた

入り口を開放していたので狭い店内が丸見えだったんだけど、マスターと常連らしい男性客が向かい合ってしゃべりこんでおり、通りがかりの観光客が入れる雰囲気ではなかった。

あの日、あのあたりにもポツポツと観光客はいた。そして他の店に入る選択肢はなかったので、入るとすればあの店だったのだが、あれだけ入りにくい雰囲気を醸し出していると、観光客は誰も入らなかったのではないか。

そう考えると1人の常連をかまったせいで1日分の観光客を取り逃がしたことになり、ずいぶん損をしている。

マスターがその常連さんを大事にしていて「観光客など相手にしなくても彼が来てくれれれば満足だ」と考えているなら、それでいいだろう。しかし、ほんとうは

コーヒー1杯で大きな顔してねばられてもこまるんだよな。他の客が入ってこれないので、はやく出ていってくれないかな。

と思っていたかもしれない。喫茶店の客単価などしれており、一人の常連だけで店の売り上げを支えることはできないのだから。もしそうならば、この常連さんは、店の営業妨害をやっていることになる。

すべてのジャンルはマニアがつぶす

「大きな顔をして居座る常連客が店をつぶす」というのはよく聞くパターンだ。ためしに「常連が店をつぶす」でググってみるといろんな記事が出てきた。

店というのは、常連の売上に頼っている一方で、たえず新しい客を開拓していかないと立ちゆかない。したがって、一元の客が入りにくい雰囲気を作ってしまう客単価の低い常連は、店の経営を圧迫する頭の痛い存在だ。

この記事には、以下のような意見も載せられていた。

コアなユーザーがライトなユーザーを拒絶していたがために、プロレスが衰退していった面もありました。僕は“すべてのジャンルはマニアが潰す”と思っていますから。

「すべてのジャンルはマニアがつぶす」を言い換えれば、「すべてのビジネスは、マナーの悪い常連がつぶす」と言っているのと同じである。

そして、このことや喫茶店やプロレスだけでなく、すべてのジャンルに当てはまるわけで、今の時代ならネットコミュニティの運営にも関わってくる。

ぼくもかつてこういう記事を書いたことがある。

応援している人が大きな顔をし始めるということはよくあって、自分はこれだけ応援したのだから、あとから来た人よりもエライはずだという妙な権利意識というか、なわばり意識が生まれやすい。

アーティストなどの熱心なファンが大きな顔をすることで、そのアーティストのビジネスの足を引っ張ってしまうことはよくある。

たとえば、数年前、矢沢永吉さんが、私設応援団会長を出禁にしたことがあったが、ざっくり言えば、常連がビジネスのさまたげになっていたということなのだと思う。

風通しの悪いコミュニティはよどむ

マーケティングコンサルタント藤村正宏氏によれば、白馬の有名な温泉ホテル「五龍館」が、オーストラリアからの観光客を入れようとしたところ「一部の常連」から以下のような声が寄せられたのだそうだ。

「外国人が来るなんて、そんなの五龍館じゃない」
「リピーターを最優先にするべきだ」
「五龍館は女将だけのものじゃない」

などなど。これに対して藤村氏はこうコメントしている。

おなじみさんとしては、昔のほうがよかったということなんでしょうけど、五龍館だって世の中の流れや環境によって変わっていかなければならないわけです。
それに「決めるのはあなたじゃないでしょ?」ってこと。
経営方針を、リスクをとって決めているのは経営者です。
それなにに何のリスクもなくただ文句をいうだけ。
「五龍館は女将だけのものじゃない」って、意味がわからないですよね。
そんなのはおなじみさんでも、ファンでもないのです。

ネットコミュニティも同じこと

これは、温泉ホテルだけの問題ではなく、同じことはネットコミュニティにもあてはまる。

仮にここにAさんの主催するネットコミュニティがあったとしよう。そこに新規顧客のCさんが入った。しかし、常連客のBさんあまりに我が物顔の「仕切り」をするので、Cさんは雰囲気がいやになって離れていった。

この場合、売り上げの損失を被るのはわがままなBさんではなくて、主催者のAさんである。そして、のちにCさんがSNSで

あのコミュニティどうだった?

とだれかに聞かれた場合、Cさんは

Aさんのコミュニティはつまらなかった

と答えるのだ。下手なことをやったのは常連のBさんであるにもかかわらず、Cさんは「Bさんががつまらなかった」とは言わなず、傷つくのは、あくまで主催者であるAさんの評判である。

「おなじみ」とか、「コアファン」とか、「常連」などと言われる人々は

自分が大きな顔をすることで、主催者の足を引っ張っていないか

ということをよくよく考えてみなければいけない。「よかれと思って」コミュニティの足を引っ張り、新規の人が入りにくい雰囲気を作ってしまうような常連など、いないほうがいい。

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