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一流には一流がついている。

成田空港で有名人とはち合わせしたことがある。元メジャーリーガーの松井稼頭央さんだ。かれが「いよいよ海を越えてメジャーに挑戦!」というときのことだからずいぶん前だが、その日なぜかぼくも成田にいた。

松井さんはANAでロス行き。ぼくは同じくANAでサンフランシスコ行き。搭乗ゲートはとなりで、離陸時間も30分しか違わない。なのでどうしても動きが似てしまう。

保安検査場前のマスコミの数がすごかった。カメラマンの列が100メートルくらいつづいていたと思う。あんなのは初めて見た。

ぼくは松井さんの1分前くらいに保安検査場に向かったんだけど、マスコミのカメラがいっせいにこちらを向いたのを覚えている。しかし、誰一人シャッターを押さない。さすがはプロ。一瞬で「こいつニセモノだ」と判断している。

そして松井さんが現れたとたんに、爆発が起こったみたいに一斉にフラッシュが炊かれて、目の前が見えなくなったのである。

当時、その光景を、ワイドショーやスポーツニュースでで見たひとも多かっただろう。番組では、松井さんがさっそうとゲートに消えていく映像に合わせて

「松井選手はメジャーへと旅立っていきました…」

というナレーションがかぶさって締めくくられたのだろう。

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しかし、事実はちがう。

松井さんは荷物検査場のピンポンに引っかかってしまい、4~5回連続でピンポンした後、ついにスーツケースの中身を全部点検することになってしまったのだった。

まわりは僕を含めて野次馬ばかりである。松井さんもびっしょり汗をかいて中身を点検している。だが、彼の背後にたち、顔色一つ変えずに指示を送っている女性がいた。

今思えば、奥様の松井美緒(旧姓:菊池美緒)さんである。現在もオスカープロモーション所属のタレントさんだそうだ。しかし、あの日は眼鏡をかけて化粧も薄く、とても芸能人には見えない、たいへんに地味な装いだった。

動揺する松井さんをしっかりとささえる司令塔のような雰囲気があり、「一流の結果を出すアスリートにはああいう後ろ盾がいるのだな~」と感心させられたものである。

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人間は適材適所。みこしに乗るのがうまい人もいれば、みこしを担ぐのがうまい人もいる。女性活躍とさかんに言われるが、表舞台に出ることだけが活躍ではない。

縁の下の力持ちみたいに、パートナーをしっかり活躍させている人は男女を問わずにいるはずだろう。そういう人の役割も数字で見えるようになればいいなあと思います。

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