スイカの甘みを増したければどうするか?

この世をささえる根本的な法則のひとつは「パラドックス(逆説)」である。

難しいことを言っているみたいだけど、説明するのはごくかんたんだ。

スイカの甘みを増したいばあいにどうするか?

塩をかけるのである。

「辛いものを振りかければ、甘みが増す」

これがこの世を支えているパラドックスだ。宇宙はスイカに支えられている。

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「のどが渇いているほどビールはうまい」とか

「連続ドラマは主人公が不幸におちればおちるほどおもしろい」とか

「断食のあとに食うカユよりうまいものはこの世に存在しない(伝聞情報です)」とか

ぜんぶこれである。

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もうちょっと重たい例を挙げるなら、

「一日生きれば、一日分死に近づく」というのもある。

生きることは、死へ向かって進むことにほかならない。

「夜があるから昼がある」でもいいだろう。

昼間、元気に動き回りたければ、しっかり寝なければならないというのも一種の逆説である。

交感神経と副交感神経の関係も逆説的だ。

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医療の世界には、「少量の毒はカラダにいい」というパラドックスもある。

「ウイルスに対する抗体」という考え方も、逆説の典型だ。

「染されたくないから、染ってしまえ~」ということなんだから。

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「対症療法」と「原因療法」というのがあるけど、この2つも逆説的な関係にある。

ガンを根本的にふせぐには、ストレスを避け、睡眠をたっぷりとり、運動をし、規則正しい生活とバランスのとれた食事をするしかない。これが原因療法だ。理想への道。

しかし、すでにガンにかかっている人の場合、とりあえずがん細胞を摘出するか、化学療法で死滅させなければならない。これが対症療法。現実的な選択肢である。

カラダを斬らなければならないし、まわりの健康な細胞も犠牲になる。健康的な生活の逆である。

これもパラドックスだ。

...そういやあ、がん細胞じたいも、勢力をひろげようとしてけっきょく宿主もろとも滅んでしまうんだよな~。あほである。逆説である。

こういう風に、この世の逆説をあげていけばキリがない。

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ここで、少々むずかしい本のハナシをする。

『共同幻想論』というのは、昭和の巨人とよばれた思想家、吉本隆明さんの主著である。

あまりにむずかしいので、きちんと理解できている自信はない。

しかしその骨子は、「一人ひとりの市民がどんどん集まった先にやがて国家が成立するわけではない」ということだと理解している。

個人と国家のあいだには「性」というパラドックスがはさまっているのだと。

これまで並べてきた世の中の法則にだいたい当てはまっている。

だから、細かい点は別にして「基本的な見立ては当たっているんじゃないだろうか」とは思う。

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草の根の市民運動と言うのは、ひとりひとりの理想が結集した先に、やがて理想的な社会が実現するという発想だ。

鳥山明『ドラゴンボール』に出てくる元気玉に近い。

個人の理想と、社会の理想のあいだが直線でむすばれている。

あいだに毒(パラドックス)が介在していない。

この考え方をぼくも長年受け入れてきたけど、はたして世の中はそういう風にできあがっているのだろうか。

「オバマが銃規制に取りくむたびに、とぶように銃が売れた」という斬り口から明日考えてみます。

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