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「どこに住むか」より、順応力がポイント
家族がよく買ってくるシナモンロールがあるのだが、これがマズい。
買ってくるのではなくて、もしかしたらもらい物かもしれないが、かなりの高級感がある。シナモンロールときくと思う浮かべるのは1個1個の菓子パンのうえにシナモンが垂らしてあるようなモノだと思うが、そういうのではなく、ロールケーキのような棒状になっている。
名前はシナモンロールではなく、わけのわからない外国語の名前がついているのだが、包み紙を捨ててしまったのでここに書くことはできない。
「なんたらシュトラなんたら」みたいな感じだったので、ドイツのお菓子ではないだろうか。スイス、オランダ、デンマーク、オーストリアなどの可能性も考えられるが、ざっくりと「ドイツ界隈」というでよろしく。
本場の味
見た感じ、贈り物になるくらいの高級菓子である。そして、高級なものというのはえてして本場の味がし、そして本場の味はハードルが高い。中国人に言わせると、日本の四川料理など四川料理ではないのだそうだが、本場の味は日本人には辛くて食べられない。
同じく「本場のシナモンロールケーキ」と聞くと、ふわっとして「お口でとろける」みたいなものを想像してしまうが、それは不二家やブルボンが作り出した幻想であって、この本場のロールケーキは、表面にシナモン臭のキツイ砂糖の層があり、その下の生地はねっとりとして重くてガッチリして胃にもたれる。
はじめて口に入れた時は
マズい
としか思わなかった。それでも食べ続けているのは、毎年もらっているからだ。または妻が懲りずに買ってきているのからである。
いずれにしろ、おいしいからではない。味がわからないわけじゃないが、あったらなんでも食べる。そして去年までは「あいかわらずマズいな・・」と思いつつ食べていたんだけど、今年食べてみたら
なんだかおいしい
のである。そして、いまにして思えば、本当は去年も一昨年もおいしかったのに、そういう自分にきづいていなかっただけなんじゃないだろうか・・キライだとと思いこんでいたけで、
わたしってホントはシナモン君のこと好きなんじゃないかしら♡
みたいに、意識すればするほど好きになっていく自分に気づくという恋愛マンガちっくな展開をしている。これをひとことで言うと
本場の味になじんだ
ということなのだろう。味覚が順応した。
サーモン寿司はノルウェー人が考えた
回転ずしに欠かせないネタの1つにサーモンがあるが、もともと日本のすしに鮭はなかったのだそうだ。日本の鮭には寄生虫がいるので生で食べられない。しかしノルウェーのサーモンは生で食べられるのだそうで、
このサーモンをぜひ寿司ネタにしてほしい
というノルウェーの官民一体となった強烈なプッシュの結果、生まれたのがサーモン寿司なのだそうである。
これはアメリカのラジオ番組で聴いた話で、2年くらい前にツイッターでも書いたことがある。その番組に登場したNYの寿司職人の人(日本人)が、最初にサーモンを生で食べた時の印象を聞かれて
気持ち悪くて覚えていない
と答えていた。4回目にたべたときにようやく、クリーミーで舌の上で溶けるような感じがしたのだという。
そして、ノルウェー大使館の猛烈なプッシュにもかかわらず、日本市場にも長く受け入れられなかった。ニチレイがはじめて買い付けるまでに10年近くかかっている。
つまり「味覚とは、けっして味蕾の上で起こる化学変化ではなくて文化なのだ」と番組はまとめている。
そう言われればそうかな・・とおもってはいたけど今回のシナモンロールの一件で思い知らされた。この重い感じがいいのだ。実にいい。
しかし、おもいだせばポカリスエットだって、最初に飲んだときにはなんだかわからなかったのである。周囲の多くの人が「うっすらみかんの味がするけど、おいしいとはいえない」などと言っていたが、いまどきそんなことを言う人はいない。
コカ・コーラもそうで、ぼくの親世代が最初に飲んだときの感想を「クスリくさい」と言っていた気がするが、いまどき天下のコークを
クスリ臭い
などという人はアフリカの奥地にすらいないだろう。
「順応力」がポイント
ちょっと長くなってしまったのでここらでやめるけど、ほんとは以上の話を食べ物だけでなく「住めば都」という風に一般化した上で、
どこに住むか
という問いより、
どこにでも住める順応力をいかに手に入れるか
という問いのほうが重要だということを指摘し、
いろんな土地に順応できる人はお金儲けがうまい
というはなしにもっていこうと思っていた。シナモンロールにこだわったせいで、話が富士山の一合目あたりで終わってしまったが、またいつか書けるタイミングもあるだろう。
まあ、なんでも「拒否するよりうけいれてみること」ですよ。
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