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淀川先生はすごい

TEDトークというイベントについてはとくに説明はいらないとおもう。ぼくは、ここ5年くらいのTEDトークを見ていて実は内心思っていることがある。「実は内心」と書いているということは、なかなか言いにくいことなのである(笑)。

もちろんぜんぶに対して思っているというわけではなくて、最先端のテクノロジーについておもっていることであり、しかもテクノロジー系のTEDを全部見ているわけじゃないのであくまで見た範囲のことでしかない。まあ話半分に聞いてくださいな。内心「世の中ってやっぱチョロいな. . .時代ってチョロいな」と思っているのである。「おまえごときが何を言うか!」と言われたら一言もないのでございます。以下、シロート考えなのでご容赦ねがいます。

テクノロジーというのは未来を目指しているわけだけど、そこにはどうしても過去に生まれた「未来像」というヤツが投影されてしまう。ホントにすごいテクノロジーはそこを突き抜けていくわけだけど、チョロいやつはたいてい過去の「未来像」の枠内におさまる。このことは、映画の世界でずいぶん経験してきたのでまちがいない。

TEDトークにもいろんな最先端のテクノロジーが出てくるけど、そのデザインというか、目指すところというか、全体のイメージというか、未来像というか、そういうものが基本的にジョブスの生み出した流れの中から一歩も出ていない。iPhoneがうみだしたスリックでソフトでなめらかで上品な世界観から突出しているものがないのだ。

「こいつらカシコイんだろうけどたかが知れているな」とつい思ってしまう。くりかえすが「おまえごときが何を言うか!」といわれたら一言もないのでございます。シロート考えなのでご容赦ねがいます。

「ジョブスが生み出した」と書いたけど厳密にはiPhoneより15年くらい前の映画の中に現れたのが僕の知っている最初だ。今後、未来像がどう形成されていくのかは知らないが、これまでのところはコンシューマーデバイスよりもSF映画のほうが先行している。

転換点は『ターミネーター2』だった。1ではシュワルツェネッガーがボロボロになって機械がむき出しになった。しかし2ではCGが発達し、ターミネーターはいくらダメージを受けてもヌルヌルすべすべしたままだった。あのヌルヌルすべすべ感は、その後現在までのさまざまな未来像に投影されている。

映画評論家の淀川長治先生が、『ターミネーター2』について言っていることが本質をついている。

シュワちゃんが相手のターミネーターの顔を銃で撃つ。すると(中略)銀色の鉛みたいに溶けた顔が、ニューっともどるあたり(中略)まるでモダンアートだ。この特殊技術が見どころですね。悪いけど、この特撮技術を見ていると、シュワちゃんが喰われてしまう。それほどすごい。これはアメリカの美術。不思議な科学の美しさと映画の技術。(『淀川長治映画ベスト1000』p.197)

あのぬるーッと顔がもどるところに科学と技術が生み出したモダンアートがあるとおっしゃっている。サイレント映画の時代から映画を観つづけてきた人だけが見抜ける歴史の転換点だった。モダンアート的な未来像の誕生だ。

それまではサイバーパンクだった。メカがむき出しのイメージは『ブレードランナー』あたりから始まり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンもそうだし、『AKIRA』もコードさしまくりである。ギザギザした未来だった。

ジョブスはこの未来像を「美しくない」と言い出し、コンシューマーデバイスをスベスベのヌルヌルに変えていったのである。しかし、最初にヌルヌルかがやいたのはiPhoneではなくて『ターミネーター2』だったと思う。

TEDに出てくるエンジニアだってiPhoneやマックをつかって開発しているのだろう。そうやって日々使っているデバイスがかもし出す未来像から発想が抜け出せなくなっているのだろうが、そんな狭いところから本当に新しいものが出てきたためしはない。本当に新しいものは、まったく別のところからズドーンと出てくるのである。

それにしても淀川先生はすごいな。「モダンアート的な未来像」が生まれる瞬間を見抜いていた。

追伸:

本記事とまったく関係ない話ですが、このnoteでときどき紹介しているアメリカのレトロゲームコレクター、メタルジーザス氏の最新動画「スーファミコレクション(My SUPER NINTENDO Collection)」の中にマジックで「かとう」と書かれたカセットがでてきてウケました。

まさか、かとうさんも自分の売ったカセットが海をわたってアメリカのYouTubeに出てくるとはおもわなかっただろうな。かとうさんに見せてやりたいな~。Twitterでも投稿したのですがおもしろすぎてここにも上げてしまう。(≧▽≦)

かとう


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