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文明とは代替肉である

かつてスティーブ・ジョブズはこういった。

「パソコンはトラックだ。タブレットは乗用車だ」

こうも言っている。

「パソコンはトラックのようになるだろう。使われ続け、価値もあり続けるだろうが、ユーザーはX人にひとりとなるだろう」

彼の言っていた意味をほそくすると、たとえばビルを建てようと思ったら砂利が必要であり、砂利を運ぶにはトラックが要る。だからトラックは「使われ続け、価値もあり続ける」が、大多数の人には砂利を運ぶ必要はないので乗用車に乗るようになる。

これとおなじで、ウェブサービスを開発しようと思えばキーボードや大きなモニターが必要だが、ほとんどの人はそういうことをやらないのでタッチパネルの快適さに移っていくだろう、ということだ。

2022年の今振り返ると、この予言は半分あたって半分外れている。タブレットはパソコンに置き換わっていないが、スマートフォンがパソコンに置き換わりつつある。

ぼくはパソコンに軸足を置いているほうだが、それでもスマホの勢いに逆らえなくなった。いまでは銀行も、SNSも、そしてGoogleすら二段階認証を要求してくるので、パソコンを開いている時でもかたわらにスマホがないと操作できない。

「スマホなしで開くのは不可能」ということは、「他人にハッキングされる心配が薄い」ということなので、わるいことではなくて、むしろいいことだ。

また、パソコンで開くにはスマホが必要だけど、スマホで開くにはパソコンは要らない。そのうえアプリなら銀行口座も指紋で一発認証なので、この快適さには抗えないものがある。

これは、ジョブズの予言したようにタッチパネルがキーボードを駆逐したというよりも、スマホが主役になってきたことで、さまざまなサービスがスマホに最適化されつつあり、その趨勢に逆らえなくなってきているということだ。

ほかにも、愛用しているクラウドのメモ帳があるんだけど、もともとはスマホからもパソコンからも開けられるのが便利だった。

しかし、いまではパソコンからは毎回2段階認証しないと開けなくなっている。ちょっと思いついたことをパソコンで書くのはほぼ不可能になったが、ハッキングされる心配もなくなったので大事な情報も置いておける。

こういう感じで、徐々にスマホに囲い込まれている。

これはハードの問題というより、多くの人の使うものには多くおかねが落ちるので、その分、多くの才能と労力が注ぎ込まれてどんどん使い勝手がよくなっていくという循環が生じているということだ。

大画面やらキーボードやらといったパソコンならではのメリットも、いずれはVRやらブレインテクノロジーで代替されるようになっていくのではないか。

これは代替肉が進化しているのと似たような現象だといえる。人類が本気で

代替したい

と願った時に、その欲望を跳ね返せるようなホンモノは存在しないということなのだろう。

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