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「演劇の街をつくった男」感想

下北沢の街に幾つもの劇場を作った本多一夫さんについて書かれた本を元に上演された舞台の感想(ネタバレあり)。

数年振りに訪れた下北沢、自粛期間が終わりお天気も良く駅前が楽しそうな人たちで溢れており、その雰囲気が伝播してマスクの下でニヤニヤしながら会場を目指した。

初めての下北沢B1は、北沢総合支所の地下、福祉の窓口と同じフロアにあり、二つ並んでいる様が良い感じ。

受付で入場料を払い横のテーブルを見るとチラシのようなものがあり、手に取ったらホチキス留めの台本で即購入。
パンフレットはないだろうと思っていたので嬉しい(小さなお芝居では、台本はよく売られるものなのだろうか?)。

会場は狭く、小さな舞台の正面と下手に舞台を見下ろす形で椅子が配置されている。
チケットを買った時は16席となっていたが、諸々解除されたこらか、40席ほどに増えていた。
私は下手の席に座り、ぼんやりと舞台を眺めながらこれが16席だったら勿体無さ過ぎだったなーなどと考えていた。

開幕。

江頭さんのよく通る声で物語が始まる。
舞台と客席がとても近いので、物語に包まれてるような感覚になる。

主人公の莉子が1972年にタイムスリップするという展開、話題になったタイムスリップドラマ「テセウスの 船」を連想しどうなることかと思っていたが、「何か言って歴史が変わったら困るので何も言いません」という莉子の台詞で何も起こらないことが分かり安心。

結局、未来から来たと言い張る莉子の言い分を、本多や和田達が信じたのか信じてないのかファジーなままで、それでも本多と二人でご飯を食べに行くくらい莉子が受け入れられているところがとても良かった。

下北沢を若者が演劇のできる街にしたい、という本多の情熱と、1972年から10年間を芝居に関わりながら生きた莉子との繋がりが自然で、包帯男が過去と現在を結びつけるラストはお見事。

ACALINO TOKYOの皆さんの上手なお芝居に引き込まれ、下北沢に絡んだ小ネタに笑わせられ、最後の本多一夫さんの言葉に胸を熱くさせられ、悪い人や嫌な人が出てこない脚本に流石だなと思わされた。

下北沢の演劇再開の柿落としにふさわしい、とても面白く素敵な舞台だった。

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