蟹座・山羊座軸
蟹座は個人が守られること=個の尊重を意味し、山羊座は社会的な仕組みや構造の維持と発展=社会全体の健全な利益を意味すると言えます。この軸は直接的に女性性と男性性のバランスを意味するため、あらゆる場面で登場します。
キャリアを大切にしたい女性にとっての家事育児と職業とのバランス、男性にとっての家庭と仕事のバランス。母性なるものとの繋がりや安心安全を求める気持ちと社会・全体への参加、その義務と責任。
蟹座は普遍性から切り離される前の記憶と関わります。それは個別の肉体を持つ前に魂が記憶していた「全体との一体感や守られているという安心感」です。蟹座の本質はそれらを強く求める本能そのものと言えます。本能であるゆえに必要不可欠であると同時に、暴走しやすいものでもあります。
たとえば、将来は医学の道に進もうと決意して大学に入ったものの、学校の人間関係が辛くて辞めてしまった。あるいは希望の職業に就いたものの、社会の汚さや理不尽さに耐えられず辞めてしまった。そうして、社会へ出ること自体が怖くなって内的世界へ引きこもってしまうーー
精神と肉体が壊れてしまうほどの場所に、無理をして居続けることは得策ではありません。勇気を持って、自分を大切に守る手段を講じることは重要なことです。周囲にどう思われようと、自分勝手だと思われようと、自分を守らねばならない時は英断を下していいのです。
その一方、怖い、傷つきたくない、受け入れられない、閉じこもっていたい・・・そんな蟹座的な感情の部分だけを優先させても、社会や帰属する集団からの孤立と現実逃避に至ってしまいますから、どうにかこの二つの間でバランスを図らなければなりません。
それは太陽の意志(目的意識)と月の感情(ゆりかごのような内的世界)とのバランスでもあります。感情は大事に扱うべきものですが、だからと言って月が太陽を消してしまっては人生が立ち行かなくなります。月は一方で生命エネルギーを奪う天体でもあるからです。
自然界の陰陽バランスは49対51だと言われます。常に陽が少し強くなることで全体が保たれる。私たちの精神においても、太陽の目的意識が月の感情を包み込み、幼くいたいけな月をリードしていく状態が望ましいと言えるでしょう。
一方、山羊座は個人的安全や欲求ではなく、社会的発展と欲求へと向かいます。お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に・・・行かずとも済んでいるのは(極力自然の脅威に晒されず便利な世の中であるのは)山羊座的男性性のおかげです。
夏は涼しく冬は暖かく、文化的に生きていける有り難さ。水や電気やガスのライフライン、道路の整備、食料の確保。インターネットの発展もそうですね。災害時や緊急時に助けが得られることも、日常の中で当たり前に物質的豊かさを享受できることも、山羊座サインのおかげと言えます。
ですが、この山羊座も危うさを孕んでいます。社会全体の体制や利益を守る性質が強くなりすぎると、個人的損得や野心を過剰に追求する暴力性となり得ます。それを優先するあまり、自然環境や恒常性や循環、個人の感情世界や個の尊厳を無慈悲に扱う凶暴性となってしまいます。
女性性である蟹座が強くなれば、個性を尊重する優しい世界には近づくものの物事は停滞し、怠惰と惰性・悶着を生み出します。男性性である山羊座が強くなれば、社会は便利に発展しますが、暴力性と無慈悲さを生み出します。
個と全体、女性性と男性性のバランスを意味する蟹座・山羊座軸の調和とは何でしょうか。個々人が自分のニーズを満たし内面をケアできること、その上で、全体の利益となる物質的発展性にも目を向け、社会参加も果たしていくこと。
自分自身の内なる軸をしっかり確立することが先で(個人レベルの責任)その上で、社会への参加と貢献(社会レベルの責任)を果たしていく。個々の精神的・物質的自立の上に、それぞれの能力を発揮し合って全体の利益と発展が生まれていく。その循環がこの軸の柱だと思います。
この軸を悪用すると世界は破滅へと向かいます。私たちの母国においても、全体主義という名の下に個人が兵隊となって死んでいったのは、ほんの百年以内のお話。近代化・科学万能というスローガンの下、命を何とも思わないような公害や薬害が生み出され、原発が爆発してもなお稼働し続けようとする狂気・・・
全体の利益のために個が犠牲となれーーそれを許すことはとてつもない悲劇を生み出します。宇宙的摂理として「蟹座・山羊座軸を悪用しようとする力」は必ず生まれてきます。だからこそ私たちもその暴走を許していてはいけません。それが民の責任でもあります。
現在、冥王星のノースノードは蟹座にあり、約二千年ほど変わっていません。(各惑星のノースノードは進化の方向性を示します)今、生きている人は皆、山羊座の両極を体験することで本当の蟹座を目指すという共通の命題を抱えています。社会の発展は重要です。もう私たちは山へ芝刈りに川へ洗濯に・・・行かなくてもいいのです。繁栄の恩恵を受けてもいいのです。
でも、だからと言って、個を蔑ろにしてはいけません。トップに君臨する誰かの野心や思惑のために、個々の命の尊厳性まで奪われていけません。そのためには、自分を思い切り大切にして、自分の声をしっかり聴く。私たちは個別でありながら全体でもあるため、自分を大切にすることが全体を大切にすることそのものなのです。
暴力ではなく戦いでもなく、無慈悲に個を飲み込んでいこうとする力にはNOと告げる。生き方でそれぞれの意志を表明する。自立と個性の尊重を達成するために、存在そのもので「個の意志」を表現していく。それが蟹座・山羊座軸の融合だと思っています。
蟹座のイメージカラーは優しいピンク、ハートの色ですね。助けあうとは依存や甘えを許すことではなく、お互いの自立と個性化を促し合えることです。そんな慈悲慈愛の世界を目指すことが、サイン蟹座を成熟させてくれますし、それによって、健全な山羊座・愛ある山羊座を生み出してくれることでしょう。