9回通った映画
昨年秋から同じ映画を観る為に映画館に9回通ったんである。
映画は「野球どアホウ未亡人」という昭和の野球漫画か野球アニメ及びロマンポルノの定番タイトルのようなワケの分からないものだ。
とは言えR18的な要素はほぼ無く野球らしき描写はあるものの誰もがイメージするような野球映画でもない。
ワケが分からない。
つまりはそういう映画である。
初見の際の感想は「なんじゃこりゃ〜」であり「ワケ分からん」であり「ヒロイン可愛い」であり「やたらバカバカしくて楽しい」であった。
60分という尺も実にいい。
映画と言えばだいたいは2時間ほどもかかるのが普通で観る前にある程度の覚悟みたいなものも必要なのがこの映画は内容も相まって気軽に観られるのが良かった。
2回目の観賞では今の殺伐とした世の中でこんなくだらない映画を観て笑っていられる事に感動して涙した。
その後はとにかくサクッと刈谷まで行けば確実に60分笑って過ごせるという魅力に惹かれて回数を重ねて7回の観賞。
そして。
それまで舞台挨拶等のイベント上映には一切行ってなかったが一度くらいはと言う気持ちとたまたま翌日に東京へ行く用事もあって8回目は長野の映画館まで出掛けた。
長野での舞台挨拶でこの映画の裏話的な話を監督さんや主演女優さんから聞き色々と納得した事もあった。
さらには公開された動画等で監督さん他の話を観たりしてこれまた色々と分かった事もあった。
しかしだ。
映画について色々と分かって来たら単純に映画だけを観て笑っていられたのが、ちょっとつまらなくなってしまったのだ。
感覚としては喜劇やコントを解説付きで観て「ここがこうだから面白いんだよ」と言われたような。
私は映画に限らず解説されなきゃ分からんようなものは観たくないのだ。
いや以前の私なら深く深く掘り下げてより作品を楽しもうとしたかも知れないが今の私がこの映画に求めていたのはそうじゃなくて単純に映画本編だけを観て感じたままで楽しみたかったんである。
そんな気持ちで9回目の観賞。
もちろん面白かったのだがやはり以前感じたように単純に笑っていられる事は無くなって妙に納得しながら観てしまってなんだか面倒くさくなってしまった。
こだわりのラーメンなんてのは食って美味けりゃいいのである。
美味い理由をあれこれ聞いて食べ方まで指南されながら食いたくないのである。
誤解のないように言うがこの映画はとんでもなく面白い。
それは間違いないので観てない方はぜひ一度観て欲しい傑作である。