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思い出のない場所へ行かなくちゃ

ロンドン、オックスフォードとまわったのち、イングランド北部の街、ヨークへやってきました。

イギリスへ来るのは7年ぶり3度目で、ロンドンもオックスフォードも3度目。1度目も2度目にも、それぞれ特別な思い出があって、特別だからこそ再訪する勇気がなくて、気づけば7年も時間がすぎてしまいました。

思い出のある街を歩くのは楽しい。変わるものも変わらないものも愛おしく感じる。

そう思っていたけれど、初めての街ヨークを訪れて、今まで以上に気持ちが軽くなったような、肩の荷が降りたような気持ちになっていることに気づきました。

思い出の街では、つい、物差しが後ろを向いてしまう。過去の自分とくらべて今の自分はどうか、あのとき思い描いていた将来と現状のギャップ、確実に歳をとっているという事実、そんなことばかりが頭をめぐってしまいます。

それに比べて新しい街は気楽です。なにせ、知らないものばかりだから。この道を曲がったらどこへつくのか、丘へ登ったら何が見えるのか、居心地のよいカフェはあるだろうか。そんな期待を抱いて歩くから、過去を振り返ってる暇なんてありません。

ありがたいことに、地球は広く、一生をかけてもすべての街をめぐることなんてできません。一度の人生じゃ、行きたいところ全てには行けない。それは絶望的なようにも聞こえるけれど、「死ぬまでどれだけでも新しい場所へ行ける」と考えると愉快な気持ちになります。

いざ今日も、思い出のない、新しい場所へ。


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片渕 ゆり(ぽんず)
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