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言葉の持つ力

銅版画に出会ったのはいつだっけ?と日記を探してみると、父親が亡くなって数ヶ月後のことだった。一日体験をしたあと、それまでに制作した作品を何点か先生に見せた。細かく描き込む画風だったため制作ペースが遅く、せっかくの機会なのに見せることができたのはほんの数点。4年でこれしか作れなかったことを伝えると「こういう絵を描く人は必ずそうなる。大丈夫、これでいいんだよ」と言ってくれた、と書いてあった。

初めて「就職」というものが頭に浮かんだ時、会社に通うことがイメージできなかった。そこで、作品しか知らないデザイナー3人にアポを取って会いに行った。アシスタントを募集しているのかも、どこで普段デザインをしているのかも不明な3人だったけれど、結果的に3人とも都内に住んでいて、ポートフォリオを見てくれた。そのうちの1人は、新卒の採用が決まっていたにも関わらず会ってくれた。彼のスタジオを後にする時に「焦るなよ、無理に世に絵を出しちゃいけない」と言ってくれた。その言葉も書いてあった。日記を読むまでその言葉は忘れていたけれど、彼のところにはデザイナー志望で会いに行ったはずなのに、ポートフォリオの後半に挟んでおいたペン画の話ばかりした記憶がある。

人生のポイントポイントで、いい言葉を貰えることは、とても恵まれているのではないか。言葉というのは、一度発したら取り戻せない。だからこそ、慎重に選ぶ必要がある。恋人に出会ってからも、たくさんの言葉を貰った。言葉は目に見えないし、形を持たない。だけどその影響力は計り知れないし、心に刻まれる。その重み、その温かさ。言葉と付き合うことは難しいけれど、自分の言葉からは逃れられない。普段の会話、作品の言葉、この文章、どんな形であろうと、紡いでいけたらいい。

意図せず日焼けする夢を見た。腕の半分が真っ黒に。現実はと言えば、例大祭に遊びに行った際に腕、足、顔など数箇所を蚊に刺された。特に腕が大きく腫れていて、一日中痒かった。そのプチストレスが夢に出たのかも。

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