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【正答率1%】岐阜県公立高校入試 2021数学 【100点の壁】

 プロフィールで「noteは大学入試の日本史や岐阜県高校入試に関することを発信する予定です」と書いておきながら、早稲田大日本史ばかりやっていましたので、ここらで普段の仕事である岐阜県公立高校入試について記事を書こうと思います。

 第1回は、2021年3月3日に実施された、岐阜県公立高校入試(第一次一般選抜)の数学から、正答率が1%だった問題を取り上げます。

※正答率は岐阜県教育委員会の発表した数値です。

2021年の数学は大問が全6問出題され、今回取り上げる問題は大問6⃣の(4)、全体最後の問題です。



6⃣ 150枚のカードがある、これらのカードは下の図のように、表には、1から150までの自然数が1つずつ書いてあり、裏には、表の数の、正の平方根の整数部分が書いてある。

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(4)150枚のカードの裏の数をすべてかけ合わせた数をPとする。Pを3のm乗で割った数が整数になるとき、mに当てはまる自然数のうちで最も大きい数を求めなさい。


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 (4)に入る前に(1)~(3)で、

(1)表の数が10であるカードの裏の数はいくつか、(2)カードの裏の数で同じ数になるカードは何枚あるか(空欄補充形式)、(3)裏の数が9であるカードは何枚あるか、がそれぞれ問われています。

この時点で、150の正の平方根の整数部分が12であること、そして、裏の数がnであるカードは(2n+1)枚あること、裏の数が9であるカードは19枚あることがわかっています。

 150枚の裏の数をすべてかけ合わせるとき、素因数3がいくつあるかを考えればよく、3の倍数の数字は、3が7枚、6が13枚、9が19枚、そして12は144~150までの7枚です。ただし、9は3×3ですので19枚の9のなかに素因数3は38回登場します。

 したがって、m=7+13+38+7=65 となります。

 誘導もあるので、正直言うと正答率が1%になるほどの「難問」には見えません。これが正答率1%になってしまったのにはいくつかの「理由」がありそうです。


(理由1)全体の最終問題だったこと

 まず、この問題が全体の最終問題だったことです。

 ここに到る道程で、3⃣(3)9%、4⃣(4)6%、5⃣(2)(イ)3%という正答率10%を切る3題を乗り越えてきていますので、この問題にとりかかったときに試験時間があまり残っていない人が大半だったでしょう。パッとみて解法が思い浮かばなければ、計算問題の見直しでもして確実に得点を確保する方が、受験の戦術としては正攻法です。


(理由2)岐阜県公立高校の受験者には私立中学受験経験者がほとんどいないこと

 この整数問題は見慣れない問題ですし、正の平方根の整数部分を使うなど中学数学レベルの問題ですが、「かけ合わせた数が3で何回割り切れるか」と問を変換すれば、小学校でやる「倍数」の問題と変わりありません。私立中学を受験した、もしくは受験勉強をしたことがある生徒が多ければ、この種の問題に取り組んだこともあったでしょう。

正答率が1%にまでなってしまったのには、岐阜県は私立中学受験熱はまだまだ低いうえに、私立中学を受験して進学した人は公立高校の入試を受けていないということも影響したかもしれません。


(理由3)中学数学から集合がなくなっていること

 もう一つは、中学の数学で集合の概念を学習しなくなっていることです。「1~100まで3の倍数がいくつあるか」など小学生でもわかりそうな問題ですが、小学校でこれを学習した後、再びこの問題に出会うのは高校生になってからです。数学Ⅰで集合の個数を学習する時に同種の問題と遭遇することになるのですが、入試での出題はそれの先取り的な意味もあったかもしれません。

 岐阜県公立高校入試の最終問題では、よく高校生の数学で学ぶことを中学レベルに落とし込んで出題されることがあります。この問題もそうした問題の一つでした。これも「相対的難問」となった要因でしょう。


 「難問」とは「相対的」なものです。もしこの問題1題に10分の時間をかけられたら、入試本番でなく普段の練習問題なら、様々な条件の変化で「難易度」は変わる事でしょう。

 「こんなの難問じゃない」「うちの生徒ならだいたい正解できる」などとおっしゃる「難易度柱」のみなさまには、その点を重々ご理解いただきますよう。


 次に何を取り上げるかは未定です。

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