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オンライン・テクノロジーとの付き合い方

Imagined Community (想像されるコミュニティ)

私が最近興味を持っているのは、オンラインのコミュニケーションと人との繋がりである。ベネディクト・アンダーソンという学者が1983年年に紹介した、Imagined Communityというコンセプトがある。当時はナショナリズムについて説明するために用いられていた。彼の解釈によるとナショナリズムは、お互いを知らずにも同じ考えを持つものたちで想像することによって作られたコミュニティである。印刷というテクノロジーが導入されたばかりのその時代に、彼はそれが新しいImagined Communityの誕生に繋がるだろうとも予測していた。

現代、インターネットの普及からオンラインで人と繋がることは大変容易になった。印刷物よりも早く情報が人の元に渡り、どんなに遠くにいる人々でさえもなんの支障もなく繋がれる世の中だ。アンダーソンのImagined Communityというコンセプトは、現代のソーシャルメディアを理解するのにもっと必要になっているように思われる。私たちは知らず知らず、何かのコミュニティに属している。ハッシュタグのMeeTooキャンペーンなどがいい例だ。同じ思想や意見を通して、人は簡単に繋がれる。会ったことがなくても、顔を見たことがなくても、Imagined Communityは構成される。

Instagramism

マノビッチという学者が2017年に、インスタグラムについての学術的研究を発表した。

‘as an analogy to modern art movements such as futurism, cubism, surrealism etc. Like these earlier –isms, Instagramism offers its own vision of the world and its visual language. But unlike modernist art movements, Instragramism is shaped by millions of authors connected by, and participating in, Instagram and other social networks’ p.115

彼が言うところインスタグラムは歴史的な芸術のムーブメントの一つで、それをInstagramismと名付けている。そして何が特徴的かというと、それはソーシャルメディアを通して繋がる何万もの人々が一緒に作り上げているというところであるという。そして、このアートムーブメントが表現するものは、象徴的なものでも感情的なものでもなく、ムードと雰囲気だとマノビッチは述べる。

ソーシャルメディアを通して人が繋がり、新しい芸術的ムーブメントを起こしているのは素晴らしい事である。ただ、気をつけていかなければならないのは、ムードや雰囲気だけをコミュニケーションの軸としている場合、そのようなプラットフォームで何かのアクションを期待することは難しいところである。オンラインキャンペーンを行って、何かをサポートするために関連するイメージなどを投稿することはとても簡単だ。何かに貢献するということは、アクションが伴う。オンラインでアクションを取るということがムードと雰囲気づくりであれば、アウェアネスキャンペーンにはもってこいの場所である。しかし、実際に「行動」と言うアクションを必要とするのであれば、現実世界との区別をすることが大事になってくる。

サーチエンジンと引き寄せの法則

引き寄せの法則について、聞いたり読んだりしたことがある人は多いのではないか。実際試してみて効果があった人も、無かった人もいるだろう。最近のテクノロジーでは、私たちの検索結果や行動、会話などからキーワードをキャッチして、オンライン広告などを通してそれぞれの興味に沿った情報提供を勝手にしてくれるようになっている。ここで注目したいのは、これらのキーワードサーチが注目するのはキーワードだけであって、コンテクストを気にしないというところだ。例えば、私はエビという生き物がどうにも苦手である。インスタグラムのおすすめフィードには私の好きそうなコンテンツが果てしなく現れるが、その中に混ざってエビの映像や写真などが現れることがたまにある。サーチエンジンは、私たちがよく使うキーワードが好きか嫌いかなんて気にしない。よく口に出したり会話にしたり、タイプしたりと、生活の中によく現れるキーワードをキャッチして、もっとそれらの情報を与えようとしているだけだ。

引き寄せの法則であれ、サーチエンジンであれ、私たちがよく考えたり口にしたりする事柄は、集められて寄ってくるようになっているようだ。だからやはり私たちが普段何を考えていて、どんなキーワードを話す時によく使っているかには気をつけたほうが良い。ポジティブに考えることが大事、というように、私たちが人生に必要な情報や出来事を引き寄せるには、それらを意識して発信していることが大事なのだと思う。

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