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[日記]やさしきものの我慢の上に

「あなたはまだバブちゃんなのね」という見下し方でなんとか生きてきた頃があった。

「そんなこともわからないのね」って。

人は社会的生物であり、社交的じゃない人も社会の中にいる。社会の中でのポジション確認をするために人間はいろんなものを比べあう。

容姿。

年収。

学歴。

出自。

知力。

体力。

連れてる恋人。

本を書く仕事をして九年目になる。
2013年のデビュー作『百合のリアル』は、高校生の女の子を主人公に、人間が言葉で互いを区分けして生きていってる現実について、そこでのサバイバル方法を対話文や漫画で描いたものだった。本を読まない人にも届けたいと思った。「わたしは保育士になりたいけど、レズビアンだから、保護者の方々にいやがられますよね、女の子を預けるの不安だって思われちゃいますよね、遠慮しないといけないですよね」……って、10代の子が夢を諦めそうになっている現実まじで無理だったので。そんな子を主人公に書いた。

それからいろんな本を書いたんだけど、全部つながっている。

言葉が生んでしまう断絶を言葉でつながなくちゃな、って試みだ。

言葉は世界を切り分ける。切り分け機能のあるもので、人は、人とつながろうとする。まじで難儀な生き物である。まじで難儀な生き物なので、「人間は言葉で切り分けたつもりになっているに過ぎないのよ」ということを言葉で言い続けてえなと思う。切り分けた中に入っているものをそっとさわってみて、すくいあげてみて、そのそばからこぼれ落ちるのを感じながら、また別の言葉に流し込んでみる、そういうことをしていきてえなと思う。

新しい本を書いている。

保育とか介護とか、人間が人間に手を貸そうとするお仕事のお賃金マジ安すぎな感をビシビシ感じながら書いている。なんで安いのかというと現状では人の世の仕組みがアタッカー優遇傾向の戦略をとっているからだ。アタッカーというのはつまり「こいつが戦えば他の奴らに勝てるぞ」とリーダーに思われるタイプの人。わかりやすく軍人とか、他にも大企業経営者とか、他国を差し置いて世界的なうんたら賞かんたら賞を取れる学者とかアスリートとか文化人とか。そういう人は勝てば勝つほど優遇されてお金をいっぱいもらえるわけで、生き場所を自分で選んでどっかに行ってしまう。どっかに行って欲しくないので引き止めるために組織はもっとお金を払う。国家も、勤め先も。国民栄誉賞あげますわよとか褒賞あげますわよとか、特別ボーナスあげますわよとか。というわけでどんどんアタッカータイプの人におかねがあつまっていく。

2012年からわたしは日本国外で移民として暮らし、2021年には障害者手帳をもらった。同じく日本国外で移民として暮らす日本ルーツの子どもたちに日本語の本を読み聞かせたり、同じく発達障害といわれる特性を持って生きている子どもたちの学習サポートをしたりしながら本を書いてきた。いわゆるマイノリティみたいなこと言われる、移民タグとか障害者タグとか性的少数者タグとかしょって人生やってきたわけだが、こうしたところの人々が「不遇に耐えて一生懸命自分らしく頑張っていますよ」的演出とともに上映されちゃう感じあれマジでなんなんだろうねって思う。いやわかる。わかるよ。決して見るものを優越しない存在が見るものに理解しやすい形で頑張ってると安心して勇気をもらえるんだよねきっと。わかるよ。

わたしも人を見下すことで自分を保ってきたから。

やさしきものの我慢の上に成り立つ社会はもう卒業だ、卒業せんければならんぞ人類、ってなりながら書いている。人類は言葉によって分断されるのだが、言葉によって過去とつながることができる。結構まあ、過去から学んでいるところはでかいと思う。感染症も戦争もなんもなくならん世の中で、少なくとも中世よりはマシな対応をしているように見える感じを感じながら、そこに希望を見ようとする、おれは、これは、果たして、過去の人を見下している人になるのだろうか。

ちがうと思いたい。

何かをニヤニヤ見下している時、人は先に進んではいない。人を見下していた自分自身も含め、過去を背中に感じながら、わたしは先に進んでいきたいよなあと思う、一歩一歩、一日一日、一文字一文字。

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